side:三井寿
遂に俺達3年の最後の大会であるインターハイが始まった。その県大会予選のトーナメント、組み合わせに恵まれ俺達湘北はとんとん拍子で勝ち上がっていく。控えメンバーを積極的に起用する余裕を持ちながらだ。
春の県大会同様に前半は1、2年の控えメンバーを出し後半は本来のスタメンを使っていく。そんな中でも桜木だけは前半後半通じて試合に出続けていた。
あいつに今一番足りないものは試合経験。だからこそ1秒でも多く試合に出して経験を積ませていく。それが湘北の、あいつの財産になるからだ。
そんな感じで四強の中で一早く決勝リーグに駒を進めた俺達に続き陵南、海南も続いたが、残る最後の四強の一校である翔陽の予選決勝で番狂わせが起きようとしていた。
「伍代君が止まらないね」
コートに目を向けたまま美和の言葉に頷く。今コートでは翔陽と津久武のブロック予選決勝が行われているんだが、津久武のキャプテンである伍代の3Pシュートが止まらない。どうやら今日の伍代は当たりの日のようだ。
「姐さん、伍代だけじゃねぇっす。南郷の奴もいい動きをしてやがりますよ」
そう言うと桜木はその目で南郷の動きを追っていた。春の県大会で競い合ったからなのか、桜木は南郷が気になっているみてぇだな。だが桜木のその注目も間違いじゃない。
なんせ今の津久武はどうやら南郷を1年ながらチームのエースとしているみたいなんだ。伍代の3Pシュートで外に注目を集め、南郷が切り込んで翔陽のインサイドを切り崩す。そうして崩されても直ぐに藤真が立て直すんだが、流れは津久武に在り続けている。
「……これはありそうだな」
去年まで贔屓目に見て中堅かどうかというチームだった津久武高校が強豪である翔陽を倒す。正にジャイアントキリングだ。まぁ、2年前の湘北もそういったジャイアントキリングを起こす側だったんだけどな。
藤真がチームを率いて巻き返しを図るが伍代の3Pは止まらず、南郷の勢いも止まらない。試合時間は刻一刻と過ぎていく。そして翔陽メンバーの奮闘は実らず試合終了。今年の予選ブロック最後の通過チームは津久武高校に決まった。
「トーナメントの怖いところだな」
「うん、でも津久武も強かったわ。決してフロックじゃない」
美和の言う通りに津久武の勝利はフロックじゃない。伍代が当たりの日だった事を考えても、エース南郷の活躍とそのエースを支えるチームの連携力は見事なものだった。
それを理解しているんだろう。コート上の藤真は涙を流しながらも伍代に握手を求めている。
「最後の大会……涙を流すなら悔し涙じゃなく嬉し涙でありたいもんだな」
「うん、そうだね」
この3年間競い合ってきた盟友の一人、藤真の夏が一足早く終わった。
俺達はそんな盟友の後ろ姿に自然と拍手を送っていたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。