三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

16 / 201
本日投稿3話目です。


第15話『智将は湘北戦を観戦する』

side:三井寿

 

 

いよいよインターハイ予選開幕の日を迎えた。

 

インターハイ予選の神奈川県大会は予選トーナメントと、各ブロックを勝ち抜いた4チームによる決勝リーグを行う二部構成になっている。

 

全国大会の出場枠は2チームあるので、決勝リーグの成績上位2チームが全国へ出場だ。

 

さて予選トーナメントなんだが俺達湘北はCブロックだ。

 

運良く予選トーナメントでは神奈川で強豪と呼ばれてる海南と翔陽とはぶつからないが、順調に勝ち進んでいけば決勝戦で古豪の武里と戦う事になりそうだ。

 

1回戦目の相手は角野高校か…キャプテンが言うには弱小校って話だが、油断せずにキッチリと勝ちにいかねぇとな。

 

 

 

 

side:角野高校のキャプテン

 

 

「…湘北ってうちと同じ弱小じゃなかったのかよ。」

 

前半が終わった時点でスコアは17ー66と大きく負けていた。

 

「くそっ、高校最後の夏だってのに…。」

 

うちのバスケ部は弱小で毎年1回戦負けの常連だ。

 

けど、そんな俺達でも細やかな目標として1回戦突破を掲げて頑張って来たんだ。

 

なのに…これはないだろう…。

 

チラリと見回すと皆揃って俯いてる。

 

わかってるんだ。もう絶対に勝てないって。

 

俺もそう思ってる。そう思う原因は湘北のCとSFがいるからだ。

 

湘北のCは目に見えてわかる程にデカイ。

 

あんなのとゴール下で争える奴なんて弱小のうちどころか、強豪の海南や翔陽にだっていないかもしれない。

 

でもそれ以上にヤバイのがSF…後輩が言うには去年の中学校神奈川県大会MVPだった三井だ。

 

試合が始まる前はいくら中学の県MVPだった奴でも、まだ1年なんだから大したことないって思ってた。

 

まぁ直ぐにそれが間違いだって思い知らされたけどな。

 

圧倒的に上手かった。正直、大学生だって言われても信じられるぐらい上手い。

 

三井1人だって止められないのにあのCまでいるんじゃどうしようもねぇよ…。

 

もう勝ち目はない。けど棄権はしたくない。そんな思いでベンチから立ち上がった俺達は驚きの光景に目を見開く。

 

なんと湘北の後半のメンバーに三井とあのCの姿がなかったんだ。

 

悔しいという思い以上に助かったって思いが強い。

 

なんせ前半はまともに試合が出来た気がしなかったんだから。

 

もう目標達成は無理そうだけど、なんとか思い出作りは出来そうだぜ。

 

 

 

 

side:高頭力

 

 

「安西先生は三井と赤木を下げたか。代わりに木暮と…どこかで見た覚えがあるな、誰だったか?」

 

扇子で扇ぎながら首を傾げる。

 

「去年の武石中のメンバーだった奴ですね。たしか倉石です。」

「なるほど、道理で見覚えがあるはずだ。」

 

去年の中学神奈川県大会の決勝で彼を見ていたのか。

 

牧と三井の印象が強すぎてすっかり忘れていた。

 

牧の言葉で思い出してスッキリしたところで、しばし湘北の後半戦を倉石を中心に観戦していく。

 

ふむ、シュートはお世辞にも上手いとは言えんがいい選手だ。

 

安西先生の指導でもう少しシュート能力が改善出来れば、2年後には県内でも屈指のGに成長するかもしれん。

 

現時点でも木暮同様にスーパーサブとしてなら十分に使えそうだ。

 

そこまで考えると一度コートから目を切り湘北ベンチに目を向ける。

 

(赤木は現時点でも優秀なCだがまだ未熟。決勝リーグまで湘北が勝ち上がってきても、うちの兼田なら十分に渡り合える。問題は三井だな。)

 

前半で見た三井のパフォーマンスを思い出しながら考える。

 

(三井は内でも外でも点が取れるスコアラー、チームのリズムを作り出すパサーに、相手ディフェンス陣を切り崩すドリブラーも出来るオールラウンドな選手だが…彼の本質はピュアシューターだ。俺なら三井のポジションはSGにするが…。)

 

チラリと湘北ベンチに座る安西先生に目を向ける。

 

(湘北のチーム事情を考えるとエースとしてSFに置くのがベター…といったところですか安西先生?)

 

扇子をパチンと閉じると顎に当てる。

 

(ふむ、決勝リーグの組み合わせ次第では牧を三井とマッチアップさせるのも悪くはないが…それも湘北が勝ち上がってきたらの話だな。)

 

湘北と角野の試合は後半の半分を過ぎても前半でついた点差は縮まっていない。

 

勝負あったな。

 

俺が席を立つと海南の皆も席を立つ。

 

「よしお前ら、ぼちぼち汗をかいておけ。相手がどこだろうと油断するなよ。」

「「「はい!」」」

 

皆がアップに向かったのに満足して頷くと、俺は振り向いて安西先生を見る。

 

「では決勝リーグで会えるのを楽しみにしていますよ、安西先生。」

 

そう言葉を残して歩き出すと、不意にバッタリと田岡先輩に遭遇してしまったのだった。




◆兼田(かねだ):拙作オリジナルキャラ。海南の3年生で正センターの男。
 
 1年の冬には海南のベンチメンバーに選ばれており、2年時の夏にはスタメンとして全国大会も経験している選手。
 
 高頭の好みなのかパワー型ではなくテクニック型のCとしてプレイスタイルを確立しており、現在では県内ナンバーワンCの呼び声が高い男である。


これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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