side:三井寿
牧が最初から全開である事に合わせる様に、海南のプレーは非常にアグレッシブなものになっていた。
対して俺達湘北は安田の指揮の下にじっくりと展開を進めていく。俺自身は牧を止めるために集中を高めてはいるが、チームとして見れば海南とは対極の組み立てだ。
「フッ!」
鋭い呼気と共に牧が仕掛けてくる。1mmでも抜け出したら強引に身体を捩じ込んで進路を確保してくるパワープレイだが、それでも牧の体幹はブレずファールにもならない。ここまでやれる選手になったのかと驚きと同時にこいつと勝負出来る喜びが沸き上がる。
俺を引き連れたまま中に切り込んだ牧は跳びレイアップに行く。合わせて俺も跳び手を伸ばしブロックするが、牧はそれに構わずボールをリングに捩じ込んだ。
「……ふぅ」
1つ息を吐く。こうして正面から決められたのはいつ以来だ?そう考えるが悔しさよりもワクワクが止まらない。
取って取られてのシーソーゲームが続く。リバウンドは赤木と桜木の2人で8割近く取っているがそれでも点差は大きく開かない。正に強豪海南の底力を見せつけられているな。
8点リードで前半を折り返して迎えた後半、俺達湘北は目を見開いた。海南がフルコートプレスディフェンスを仕掛けてきたんだ。
おそらくは対山王戦用の秘策だったんだろう。だがこの追い詰められた場面で出し惜しみは出来ないとカードを切ってきたか。
俺、赤木、木暮は山王のフルコートプレスディフェンスを経験しているからある程度対処出来るが、運動能力で劣る安田と未経験の桜木が捕まった。
2人が海南のフルコートプレスディフェンスに絡め取られボールを奪われ失点する。5分と掛からずにワンゴール差まで追い上げられた。
そこで安西先生が動く。タイムアウトを取り1度海南に傾いた流れを切り更に選手交代だ。
「宮城君、流川君、行けますね?」
「はいっ!」
「うす」
安田よりも宮城の方が運動能力が高い。それに宮城はドリブルとパスセンスもいい。海南のフルコートプレスディフェンスを破る切っ掛けをと期待しての投入だろうな。
流川は桜木と交代だ。得点力という一面では流川の方が上。桜木のリバウンドは惜しいが今は流川の得点力が必要な場面ってことだ。
試合が再開すると交代した2人は安西先生の期待に応えていく。宮城が僅かなスペースにその小さな身体を捩じ込み突破すると、ボールを受け取った流川がきっちりとゴールを決めて海南を突き放そうとする。
しかし海南の底力も見事なもので食らい付くどころか逆転されてしまった。だが4点リードされたところで海南はフルコートプレスディフェンスを止めた。それだけ消耗が激しい戦術なんだろう。
一転して追い掛ける立場になった俺達は果敢に攻めていく。だが海南はしぶとく中々追い付けない。
残り5分のところでスタミナを使いきった流川が桜木と交代。更にフルコートプレスディフェンスに対抗するために足を使い続けた木暮も倉石と交代だ。
「宮城っ!」
ボールを貰うと牧が素早くチェックを掛けてくる。3Pシュートだけは許さない。そんな気迫を感じる圧力だ。
だがそんな状況で決めてこそシューター。狙うぜ。
ハンドフェイクと視線でのフェイクで牧を揺さぶる。そしてクロスオーバーからバックステップ。指に掛かったシュートがイメージ通りの弧を描いて飛んでいく。
スウィッシュで決まり1点差。捕まえた。
「1本!止めるぞ!」
「応!」
だがその1本が遠い。取って取られて時間が過ぎていく。残り4分。残り3分。残り2分。そして……残り1分。時間が無い。
ボールを持った牧と対峙する。牧は中々仕掛けて来ずに時間を使って来る。慌ててこちらから仕掛ければ抜くぞとプレッシャーを掛けて来やがるぜ。
「ラスト30秒!」
木暮の声が届いた瞬間仕掛けた。伸びた左手。その指先にボールが触れて牧の掌中から弾き出す。
走る。転がるボールを拾う。牧が追い付いて来た。牧の目を見てシュートフェイク。スティールされて動揺していたのか膝が伸びた牧を抜き去り3Pラインへ。
完全なフリーで打った3Pシュートが空中で弧を描く間、会場の歓声が止まる。そして……。
『ワァァァアアア!』
スウィッシュで3Pシュートが決まると観客席から爆発したかのような歓声が上がった。
「まだ終わってない!止めるぞ!」
「応!」
2点リードで残り15秒。ボールを持った牧に張り付き時間を使わせる。
まだか……まだ終わらないのか!?
強引にシュートを打とうとシュートモーションに入る牧……いや、違う!
伸びそうになる膝を堪え牧のサイドステップに追随。目に映る牧の顔が歪む。
今度こそ跳び上がって打たれた牧の3Pシュートをブロック。それと同時に試合終了の笛が鳴り響いたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。