三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第152話『念願成就』

side:三井寿

 

 

 海南に勝利して全国への勝ち抜けを決めたその後、気になる陵南と津久武の試合を見学したんだが……。

 

「津久武が思ったよりも善戦してるわね」

「あぁ、そうだな」

 

 美和の言葉に頷く。もっと陵南が圧倒するかと思ってたんだが、南郷が思った以上に仙道と勝負出来ている。その影響か津久武も陵南に食い下がり続けている。

 

「……あの野郎」

 

 ライバル心があるんだろうな。桜木が南郷の奮闘に拳を握りしめている。

 

「けどやっぱり津久武はゴール下が厳しいわね」

「シューターの伍代とエースの南郷を除いた全員で対応しちゃいるんだがな」

 

 なりふり構わずといった感じで津久武は三人がゴール下付近に集まり魚住に対処しようとする。もちろん状況次第なところもあってそうそう三人同時に魚住に当たれるわけじゃないが、それでも一人にあそこまで戦力を集中するのはそうある光景じゃない。だが……。

 

「……あれでも魚住は止まらんか」

「池上のフォローもあるがな」

 

 魚住はCとして飛び抜けた実力の選手だ。だからこそどのチームも魚住への対処を考える。

 

「池上のフォローはお前達を意識したもんだろうな」

 

 赤木と桜木の二人に目を向けながらそう告げる。二人の連携は試合を重ねる毎に高まっている。それを見たからなのかどうかはわからないが、池上と魚住の連携は間違いなくそれを意識したものだろう。

 

 チラリと陵南ベンチの田岡監督に目を向ける。どっしりと椅子に腰を下ろし試合を眺めているが、時折隣でメモを取っている相田と話す光景がある。目で見た情報だけじゃなくデータでも情報を得て試合への対応を考えている……ってところか?

 

「選手だけではありません。田岡監督も成長しているようです。ほっほっほっ、私も負けていられませんね」

 

 安西先生が楽しそうに笑う。だがその眼鏡の奥にある目には熱いものを感じる。先生もまた燃えているんだ。

 

 前半が終わり両チームがベンチに下がる。試合は陵南のリードで折り返しだ。

 

「津久武は食い下がってるが……」

「そうね。打てる手が無い」

 

 美和の言葉に頷く。確かに津久武は善戦をしている。だが陵南の圧力を跳ね返し逆転に至れる様なカードが無い。あるとすれば伍代が翔陽戦の様にクラッチタイムに入る必要があるが……厳しいだろう。

 

 現在神奈川のチームは総じて3Pシュート対策を考えている。神奈川のどのチームもシューターを揃え始めている影響だな。だから当然陵南も3Pシュート対策を考えている。その証拠に必ず植草か福田のどちらかが伍代に張り付いているからな。

 

 シューターってのは面白いものでとりあえずシュートを打たなきゃ始まらない。決まろうが外れようが打たなきゃリズムが生まれないんだ。それを陵南……というか田岡監督は理解しているんだろうな。徹底して伍代に3Pシュートを打たせないようにしている。他の選手に打たれて決められるリスクを承知の上でだ。

 

 その後、後半が始まったが7分を過ぎた辺りで陵南のリードが広がり始めた。特に何かがあったわけじゃない。チームの地力が現れ始めたんだ。

 

 津久武も何とかしようとするがチームの軸である南郷と伍代が抑え込まれているため打つ手なし。そのまま時間は過ぎていき試合終了。2勝目を勝ち取った陵南が初めての全国行きを決めた。

 

 余程嬉しかったのか試合終了のホイッスルが鳴って誰よりも喜んだのは……田岡監督だった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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