side:三井寿
津久武と海南の試合は津久武が勝利した。決勝リーグで海南が全敗とあってか少し騒がしくなったが、海南のメンバーに狼狽えたところはない。自分達がすべきことをわかってるからだろうな。
さぁ、今度は俺達湘北と陵南の試合だ。うちのスタメンはCに赤木、SGに東、PGに宮城、SFに流川、PFに桜木の布陣だ。
「全国大会を勝ち抜くには本来のスターティングメンバーだけでは厳しいものになります。それが全国大会です。故にここで全国の大舞台の前に出来る限り多くのメンバーに経験を積んでもらいます」
その言葉通りに俺や木暮に倉石といった3年メンバーはベンチスタートだ。赤木がスタメンで出るのは少しでも魚住との戦いの経験を積むためだな。
試合前の整列のために両チームのメンバーが出ていく。どうやら陵南はベストメンバーで来るようだ。
「小細工は抜き。初出場の全国を見据え、ここで勝って弾みをつけよう……といったところですか」
安西先生はそう言うが、それを読んでいたからこそ今回のスタメン選抜だろう。
そしておそらく田岡監督も読まれていることを承知だったんだろうな。ベンチに深く腰を下ろして悠然と見守っているぜ。
試合が始まった。魚住がジャンプボールを制して陵南の攻撃から。植草がボールを運び仙道へパス。さぁ、流川と仙道のマッチアップだ。
流川には1つ指示が出されている。それは前半でスタミナを使いきることだ。
流川はオフェンスに関してはいいもんを持っている。スコアラーとしてなら陵南の福田と肩を並べるレベルと言っていい。ただし、それは全力でプレーした場合だ。
そんな流川に初っ端から全開で行かせる。これは安西先生の流川育成に関わる起用法だ。
安西先生は流川に小ぢんまりとした選手にならせる気はさらさら無い。全力でプレーさせてとことんオフェンスを磨かせる。そして普段の練習でじっくりとスタミナをつけさせていき2年後、あるいは1年後に湘北のエースにするつもりなんだ。
仙道が仕掛けた。流川は辛うじて食らい付くが切り返されるとあっさりと振り切られる。
流川を抜いた仙道はそのまま中に切り込んでいく。中には魚住と福田。そしてその2人に付く赤木と桜木。さぁ、どうする?
仙道は勢いのままに突っ込んだ。赤木がブロックに跳ぶが仙道はダブルクラッチでブロックを回避しリングにボールを沈めた。
「あぁ、忘れてたぜ」
「何を?」
「あいつが元々は点取り屋だったってことをさ」
そう、仙道と初めて会った頃、あいつはパスをせずに自分で得点を狙いにいくやつだった。ちょうど流川みたいな感じでな。
だがあいつはパスの楽しさを知り広い視野を身に付けた。その結果、元々高かったオフェンス力が更に増したわけだ。
「流川も早く気付けばいいんだが……」
「成長のペースは人それぞれってね。それに、あんまり教え子の成長の機会を奪われると安西先生が拗ねちゃうわよ?」
ギクッとして肩をハネさせた俺は恐る恐る安西先生へと目を向ける。すると……。
「えぇ、その通りです。なのであまり取らないでくださいね」
笑みを浮かべながらそう言った安西先生は朗らかな声で笑うのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。