side:三井寿
前半終わって21点リードされたか……。まぁ健闘した方だな。
ゴール下は赤木と桜木のコンビでしっかり勝負の形をつくれちゃいたが、他はというと陵南に一歩上を行かれていた感じだからな。
とはいえゴール下近くに常に2枚いる関係で、他の人数がどうしても足りなくなっちまう。だからこの結果も仕方ないっちゃ仕方ないんだが……。
(問題は仙道と流川の勝負だったな……)
勝負の内容としては仙道の圧倒的勝利。まだ2年だってのに随分と貫禄が出てるぜ。
「後半、流川君と三井君を交代します」
「はい!」
その後、安西先生が細々と指示を出して時間となってコートに向かおうとすると……。
「三井君、流川君にエースとしての在り方を見せてあげてください」
「……ふっ、任せてください」
とはいうものの、俺は俺のバスケをするだけだ。そこから流川が何を学び取るかはあいつ次第。
「待ちくたびれましたよ。三井さん」
「おう、待たせたな。詫び代わりに思いっきり行かせてもらうぜ」
「望むところです」
後半の開始。うちの攻めから。宮城と代わって出場している安田からのパスを受けて仙道と対峙する。
(さて、点差を考えると3Pで行きたいとこだが……)
昨今の神奈川バスケの流行をふと思いその考えを改める。
(いや、だからこそこう行ってみるか!)
俺の3Pを最大限警戒している仙道に対してドリブルを仕掛ける。そして中に切り込んで3Pラインの内側にまで入りミドルシュートを打った。
スウィッシュで決まったのを見届けると直ぐにディフェンスに戻る。
(3Pへの警戒とゴール下への警戒が高まっているのが今の神奈川バスケ……だからこそミドルシュートに価値が出る)
シュートの成功率、成功時の得点等を考慮した期待値。それらを総合した場合の現在のミドルシュートの価値はかなり高いはずだ。そしてミドルへの警戒が高まったのならまた3Pシュートを打てばいい。
(結局はいたちごっこ。どれだけ早く気付き適応出来るか。センスかデータかは問わない)
俺のミドルシュートに違和感を感じたのか仙道の片眉が上がっている。あいつのセンスならいずれ気付くだろうな。今のミドルシュートの価値。その重要さに。
(まぁ、その気付くまでの間は楽に抜かせてもらうぜ)
陵南の攻撃を防ぎ再度うちの攻撃。ボールを貰った俺は軽くフェイントを入れてからまたドリブルで仕掛けミドルシュートを打ち決める。
これで確信を持ったんだろうな。仙道から『あっ』と声が零れた。
(気付いてもどうしようもないぜ。ミドルを警戒すれば3Pを打つだけだ)
そう内心で思った俺だがどうやら気付いたのは仙道だけじゃなかったらしい。陵南がタイムアウトを取ってきた。
俺はベンチに戻りながら陵南ベンチにチラリと目を向ける。
(あの様子だと気付いたのは田岡監督か?)
俺達の代が高校に入学した頃の田岡監督にはまだどこか勝負に対する甘さがあった。けど今の田岡監督には油断が見当たらない。相手を侮るなど言語道断って感じだな。
「それでいて勝負を楽しむ余裕すらある……いや、全国出場を決めてその余裕も出てきたのか。ほんと、手強い指揮官になったもんだぜ」