side:安西光義
(流石は三井君。もう気付いたのですね)
三井君が行ったミドルシュート攻勢は現在の神奈川高校バスケの環境にとても適した一手です。外と内に警戒が向いている現在、中距離への警戒は薄い。故に良い形でシュートを打てる可能性がとても高い。そして良い形でシュートを打てれば決まる確率も高くなります。
(直感、計算、どちらかはわかりませんが素晴らしいバスケセンスですね)
ただ一つ問題があるとすれば……これは全国で使おうと思っていた戦術でもあるのですよね。
全国の舞台で使い相手の動揺を誘い勝利を呼び込む……というプランを練っていたのですが、まぁ仕方ありません。
三井君が優秀であることは知っていたこと。いずれは気付き実行するとは思っていました。ならば私は今回のことを踏まえて新たなプランを考えるだけのことです。
(さて、田岡監督はどう対応しますかね?)
おそらくは外警戒の現状維持を選択するでしょう。ですがそれは仙道君が三井君にドリブルで抜かれ続けることを意味します。仙道君の心情を考慮すれば最善とは言い難いですが……。
(チームの勝利を優先するか、選手のモチベーションを優先するか……難しい問題ですが、決断するのが指揮官です)
チラリと陵南ベンチに目を向けた私は、直ぐに目を戻し皆に指示を出すのでした。
◆
side:田岡茂一
私の気付きをチームに共有すると教え子達から唸り声が上がる。流石は三井と唸っているのか厄介なと唸っているのか……いや、両方だろうな。
「理解したところで伝える。作戦に変更は無い。このままで行くぞ」
そう伝えると教え子達が驚きの表情を浮かべる。そうだろうな。だがこれが私の決断だ。
「いいな、仙道?」
「はい」
「三井に抜かれ続けるぞ?」
「悔しいですが、今の俺じゃスリーを決めてノッた三井さんは止められません。それに……チームが負けること以上に悔しいことじゃありませんよ」
仙道のその言葉に笑みが浮かぶ。
(あぁ……本当の意味でエースになったな)
エースとは何か?私の考えではチームを託せる選手のことだ。その選手にチームの勝敗を託し、如何な結果になろうと後悔しない選手のことだ。
「よし、行ってこい!」
「「「はい!」」」
教え子達がコートへと向かう。その背中のなんと誇らしいことか。
私はチラリと湘北ベンチへと目を向ける。すると安西先生と目が合った。
(私は貴方には及ばないかもしれません。ですが教え子達は違いますぞ)
私の教え子達は、陵南というチームは、決して湘北や全国の強豪達にだって劣るものではない。その自信がある。その信頼がある。ならば後は信じて共に戦うだけだ。
「さぁ勝つぞ。勝って神奈川一位として堂々と全国に乗り込むんだ」
これで本日の投稿は終わりです。
そして早いですが夏休みに入ります。
9月にまたお会いしましょう。