side:三井寿
(崩れねぇな……)
後半も残り5分というところだが、ここまで散々抜いたのも然程影響なく仙道はプレーのパフォーマンスを保ち続けている。
(なるほど、お前もそこまで来たか)
モチベーションによりプレーの質が変化する。これは人間である以上仕方ないことだ。
だが一流と呼ばれるプロの領域で戦うのならば、モチベーションによるプレーの質の低下は最小限に止め、そして上昇については最大限に発揮出来るようにならなきゃいけない。
もちろん魚住のように抜群の安定感こそが最大の魅力だという選手もいるが、俺や牧に仙道といったタイプの選手……エースと呼ばれるような選手はここぞという場面での爆発力が必要なんだ。
安定感と爆発力。相反するそれを兼ね備えてこそ本物のエース……ってのが俺の持論なんだが……。
(まだ2年の夏だぜ。早くねぇか?)
仙道なら本物のエースになる。その確信はあった。だが俺の予想じゃ俺達の代が抜けてチームを背負ってからだった。
(才能と環境……この2つが揃うとその成長速度は計り知れないってことか)
それはともかく、だ。
(どうしたもんかな?)
ここまで仙道が崩れねぇのは正直なところ想定外だ。今から強引に3Pシュート打っていってもいいが……。
(それでも決めきれる自信はあるが……今それを見せることにそこまで価値があるか?)
俺達の目標は全国制覇。中距離という選択肢に加えて更に手札を見せてのここでの勝利にどこまで価値がある?
(感情ではここでも勝ちにいきたいとは思うが……)
ふとベンチに目を向けると安西先生と目が合う。俺の迷いを読み取ったんだろう。先生は首を横に振った。
「……ふぅ、そうだよな。迷うな」
そう、目標はあくまで全国制覇なんだ。そのために必要なのはここで更に手札を切ることじゃない。温存して、全国の舞台で勝つ確率を少しでも引き上げることだ。
それに仙道だって耐えてるんだ。俺が耐えられなくてどうするよ。
◆
side:仙道彰
もう何回三井さんに抜かれたんだろうな?そう思いつつも集中を切らしちゃいけない。例えファールをしてでも3Pシュートを打たせちゃダメだからな。
代わりといっちゃなんだが抜かれるのは仕方ないと割り切ってる。むしろ三井さんのドリブルを特等席で見させてもらい勉強しているつもりだ。
(けど、きついものはきついもんだ)
少しでも集中を切らしたら横じゃなく上を抜かれる。その怖さがある。確信がある。それがシューターの怖さであり、三井さんの凄さだ。
「おっ?」
三井さんが大きく息を吐いた。何かやってくるのか?
そう思い気を引き締め直したが、いっそ清々しいぐらいにスパッと抜かれた。
「……すっげ」
今のは3Pシュートに集中してなくても間違いなく抜かれた。そんだけ良いドリブルだった。
「今のも録ってるよな彦一?」
得点を取られ試合を再開するまでの僅かな間、俺はベンチの彦一に目配せをするとグッとサムズアップが返ってくる。
「よし、後で見直すか。試合に勝った後でな」
その後、魚住さんを中心にリードを保ち続けた俺達は、神奈川予選優勝を果たしたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。