side:三井寿
陵南に敗れインターハイ県予選を2位通過した俺達だが、気持ちを直ぐに切り替え最後の合同合宿に参加すべく海南へと向かう。
「今年もよろしくお願いします。安西先生」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」
監督同士の挨拶も終わり合宿所に荷物を置くと、早速とばかりに今回の合宿に参加する全員が体育館に集合した。
目新しいのは津久武が参加したことか。桜木と南郷がメンチを切ってるぜ。
「では全員、ケガなく励むように」
高頭監督の号令で始まった合同合宿。基礎を鍛える午前と試合形式中心の午後と別れる例年通りの形だ。その午後の試合形式では安西監督と田岡監督の指揮に注目が集まる。
隠すことなどないと今のチームの力の全てを試していく田岡監督。対して安西監督はそれとなく新チームのメンバーを構想しているかの様な形で選手の起用をしていく。
「流川君、もっと外を狙ってみてもいいかもしれませんね。桜木君はもっと積極的にゴールを狙ってください」
今は練習。どんどん失敗して経験を積み重ねていいんだ。だがどうしてもそれを躊躇しちまう奴ってのはいるもんだ。だからこうして時折安西先生みたいに声を掛ける必要がある。それは安西先生だけでなくこの合同合宿の到る所で見られる光景だ。
「清田、今の場面は突っ込んでもいいぞ。パスの選択肢があるのはいいが、もっと積極的にいけ」
「お、オス!」
「南郷、裏をかくのもいいが時には真正面から仕掛けるのも悪くないんじゃないか?」
「あ~なるほど。確かにその方が相手を惑わせますね」
俺も気になった場面ではこうして声を掛けているし、牧も安田や宮城といった後輩PG達に自分の持つノウハウを余すところなく伝えていっているな。
「俺ならドリブルで仕掛けるな。抜ける抜けないは関係ない。パスを出すスペースを作るためだ」
「チームメイトに動いてもらって展開を作るんじゃなく、自分で展開を作るためですか?」
「そうだ。ゲームメイクはPGの特権だ。他者に委ねるな。その意識の一点だけでPGは成長出来る。時にはエースにボールを集めることもあるだろう。だがそれはあくまでゲームメイクの選択肢の一つであるべきだ」
PGの特権か……あいつらしい言葉だな。
「三井さん、一本いいですか?」
「おう、いいぜ」
言葉よりも行動。百聞は一見に如かずを体現するかのように仙道は1on1を誘ってくる。
俺と仙道がコートの一角で対峙するとディスカッションで溢れていた体育館の喧噪が静かになる。どうやら俺達の勝負に注目してるらしいぜ。
「じゃ、行きますか」
そう言って鋭いドリブルで仕掛けてくる仙道。それを防ぐと楽しそうに笑う仙道。
「ははっ、最高ですよ三井さん」
「おう、俺も楽しいぜ」
チームのエースという束縛から解き放たれた仙道のプレーはどこまでも自由だった。成長という可能性をどこまでも感じさせるものだった。
そんな仙道の姿に触発されたのか桜木や流川、南郷に清田といった次世代のエース候補達がそこかしこで勝負を始め出す。
こうして暑い夏の合同合宿はどんどん熱さを増していくのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。