本日投稿1話目です。
side:木暮公延
1回戦を大勝した俺達は2回戦、3回戦と順調に勝ち上がっていって、予選トーナメントの決勝戦まで駒を進めた。
正直に言って今回は凄く運に恵まれていたと思う。
1回戦目の角野を始めとして弱小や中堅には届かないぐらいの高校とばかり当たったんだからな。
それでも角野とかと同じく弱小って呼ばれてた湘北が、予選トーナメントの決勝戦まで勝ち上がったのには価値があると思う。
何故ならチームの皆の意識が変わってきたと感じているからだ。
以前まではどこか本気になりきれていない雰囲気をしたメンバーもそれなりにいた。
それこそ内申書の為に部活を続けているってハッキリと言った奴だっていたんだ。
でもそういう奴等のほとんどは春の県大会以降に練習が厳しくなるとバスケ部を辞めていった。1年なんて残ったのは俺と赤木に三井、そして倉石の4人だけだ。
でも残った人達は今ではバスケに本気になってきている。
ベンチで出場の機会に飢え、チームの勝利に心から喜ぶんだ。
「木暮、アップだ。行くぞ。」
そんなチームの状態が嬉しいのか、赤木の声もどこか弾んでいる様に聞こえる。
「あぁ、すぐ行くよ。」
さぁ、行こう。そして勝ってこの楽しい時間を少しでも長く続けるんだ。
◆
side:赤木美和
予選トーナメント決勝戦の武里との試合が始まった。
武里には突出した選手はいないけど、1つ1つのプレーが丁寧でミスが少ない。
対して湘北は三井君を除けばそれなりにミスが目立つ。
うちも最近では部全体の意識が変わって練習をしっかりとする様になったけど、そうなってからまだ1ヵ月程度しか経ってないし、こういった差が出ちゃうのは仕方ないんだろうなぁ。
それでも試合は互角に渡り合ってるわ。三井君と剛憲のおかげでね。
剛憲がゴール下を制しているからチームで多少のミスがあっても大きくは崩れないし、三井君がそれらのミスを帳消しにする程にスコアを稼いでいるわ。
互角の状況が続いていた試合が動いたのは前半の半ば。武里が三井君を止めようとダブルチームをつけると、安西先生がタイムアウトを取って木暮君を投入したの。
すると木暮君にもロングシュートがあるから武里はマークをつけないといけない。
それで中が人数有利になると石渡さんに土橋さん、そして剛憲が大暴れ。
前半18点のリードで折り返すと、後半からは武里の選手達のミスが目立ち始める。
武里の監督が落ち着けって声を出すけど武里のミスは減らず、むしろ点差はジワジワと広がっていったわ。
そしてそのまま試合終了。89ー55でうちの勝ち!これで決勝リーグ進出よ!
さぁ海南に翔陽、待ってなさい。
あんた達を倒して全国に行ってやるんだから!
◆
side:田岡茂一
「ふぅ…なんとか勝てたか。」
予選トーナメントの決勝戦、三浦台との試合は78ー76とワンゴール差で勝利を掴む事が出来たが、課題が目につく試合だった。
先ずは魚住のファウルトラブルだ。魚住は前半だけで4ファウルをしてしまい、後半残り5分までベンチに下げざるをえなかった。
あれが無ければもう少し余裕を持った試合運びが出来ただろう。
次に池上。ディフェンス能力には問題ないが、オフェンスになるとかなりもたついていた。
この大会が終わったらある程度のオフェンスパターンを構築させねばなるまい。
試合終了の挨拶を終えると教え子達に帰りの準備をさせつつ思考を続ける。
(なんとか決勝リーグに勝ち進めたが、勝ち進んだチームの中ではうちが一番下だ。ジャイアントキリングを起こすための起爆剤も無い。…厳しい戦いになるな。)
だが、試合前から諦めていては監督失格だ。
(うちが戦って一番勝てる可能性が高いのは翔陽だろう。そこで勢いをつけることが出来ればあるいは…。)
そこまで考えて私は頭を振る。
(いかんな、どうしても希望的な展開に期待をしてしまう。こんなでは高頭の奴にでかい顔をされてしまうな。)
気持ちを切り替えるために1つ息を吐く。
「決勝リーグまでの僅かな時間でどこまでチームを改善出来るか。せめて苦手意識を持ってしまう様な無様な敗北だけは避けなくてはな。」
おっといかん、また弱気な事を。
やれやれ、私もまだまだ未熟だな。
次の投稿は9:00の予定です。