side:三井寿
選手指名選出練習試合も10分ハーフの半ばを過ぎた。前半から双方共にガンガン攻め合っている展開。点差はほぼなく進んでいる。
「魚住!」
自分で持って仕掛けた宮城だが、シュートは外れリバウンド勝負に。ゴール下で魚住と桜木がポジション争いを繰り広げる。
二人が跳び上がると清田と福田が桜木のフォローに走る。前半から続く光景だ。
その動きを止めようと仙道と南郷が動く。俺はカウンターに備えて少し離れておく。すると牧も俺についてくる。
「宮城と桜木がいいな」
「吹っ切れた……ってのとは違うか。けど、一つ上に行けるきっかけは見つけたみたいだな」
牧の言葉に応えながらも試合状況を伺う。魚住がキャッチしようとしたボールを桜木が指先で弾くとワッと選手達が殺到する。その中で一早くボールに辿り着いたのは清田だった。
「いい反応だ」
「一歩目の思い切りの良さがあいつの長所だからな」
自慢の後輩なんだろうな。牧は清田の動きに笑みを浮かべながらも俺から注意を逸らさない。
ボールを持った清田がカウンターの速攻を仕掛けようとしたがその前に仙道が立ちはだかる。
「あいつに仙道はまだ荷が重いが……どうする清田?」
牧が楽しそうに呟く。そんな呟きに反発するように清田が仕掛けた。だが仙道を抜くことは出来ない。
「仙道は本当にディフェンスが上手くなったな」
「誰かさんに散々抜かれまくったからな」
「それはお互い様だろ?」
俺も牧も仙道とは昨年からバチバチにやりあった仲だ。だからこそ仙道はあそこまで成長したと自負するところもある。だがあいつの成長に大きく寄与したのは俺達よりも田岡監督と魚住だろう。
「秋からはあいつが中心になるが……大丈夫か?」
「どうだろうな……」
チームスポーツにおいて活躍する選手の中で急にパフォーマンスが下がったりすることがある。そういった現象の中の原因の一つにチームの中心選手となり様々なプレッシャーにさらされることがあるんだが……。
「少なくともあいつは背負うってタイプじゃないな」
「あぁ、プレーで引っ張るタイプだろうな」
牧の言葉に頷く。
チームを背負う。チームを引っ張る。チームスポーツでよく言われる言葉だ。
だがそれがプレッシャーとなりパフォーマンスが下がる。これもよく目にする光景の一つだ。
それをどう乗り越えるのかがその選手の未来に大きく関わるんだが……。
「まぁ大丈夫か」
「だな」
ここまで鎬を削ってきたライバルの一人である仙道。そんな仙道に対するある種の信頼が俺達にはあった。
そんな俺達の信頼に応えるかのように仙道は清田からボールを奪う。そして返す刀でゴールを奪った。
「ったく……清田ァ!後でダッシュだからな!」
「お、オォス!」
苦笑いをしながらも清田のチャレンジに満足そうな様子を見せる牧だった。
その後、試合は進み俺達の勝利で終わる。
だが試合の勝敗以上に各選手の成長の糧となったと感じた試合だったな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。