side:三人称
ついに開幕したインターハイ全国大会。各チームが各々の注目チームの試合を見学している姿がそこかしこで見受けられる。
1回戦、早速姿を現した湘北高校の試合には同じ神奈川の陵南だけでなく豊玉、愛和学院、そして王者山王と錚々たる顔ぶれが試合会場にて見学を始めた。
「この試合、ベンチメンバーを含めて全員を起用します。各自準備を怠らないようにしてくださいね」
試合前に安西はそう告げた。狙いは幾つもある。
先ずは全国という舞台で固くなりがちな選手達を解すため。そして全国という舞台を経験させるためだ。
湘北の3年全員がこの夏が終われば引退する。残されるメンバーは必然的に1年と2年になりそのメンバーでウインターカップを戦っていくことになる。今の神奈川で勝ち上がるには少しでも成長を上積みさせねばならない。そう感じたが故に安西は多少のリスクを背負ってでも登録メンバー全員の起用を選択したのだ。
スタメンはCに赤木、Gに倉石、SGに木暮、SFに三井、PGに安田とここ最近の湘北では珍しい桜木を抜いたメンバーだった。理由は安西の予想以上に桜木の心身の状態が良くなかったからだ。
桜木はおよそ一年半の間バスケに本気で打ち込んできた。この全国の舞台は本気で打ち込んできたからこそ焦がれた舞台だ。だからなのだろう。緊張と興奮が入り混じり武者震いが止まらず、フワフワと浮足立ってしまいドリブルもシュートもまともに出来なくなっていたのだ。
安西も声を掛けて状態の好転を試みようかとも考えたのだが、彼の今後の成長も考えて自身で乗り越えさせることを選択した。
試合が始まった。相手は茨城の高校。初出場であるからかやや固さが見られる。
そんな相手に湘北のメンバーは伸び伸びと試合を進めた。先ずは挨拶代わりと言わんばかりに三井が3Pシュートを決める。お返しとばかりに茨城が攻めようとするが相手PGのパスを倉石がインターセプト。そのまま速攻を決めて相手の立ち上がりを潰す。
連続で得点を決められたもののどうやら茨城の高校は逆に落ち着いたようだ。ある意味で開き直った茨城の高校はゆったりと組み立てる形で試合を進めていく。安田の組み立てとも噛み合い試合展開は非常にゆっくりとしたものとなっていった。
だがだからこそ地力の差が現れていく。ジワリジワリと点差が開いて前半残り5分となると20点の差がついていた。そこで安西は三井と代えて流川を送り出す。
全国の舞台でも流川は常と同じようにパフォーマンスを発揮していく。そんな彼を見て思うことがあったのか桜木が落ち着きを見せ始めた。それに気付いた安西は笑みを浮かべる。
「桜木君、後半頭から行きますよ。アップをしておいてください」
「おう!」
続いて安西は他のベンチメンバーにも目を向ける。
「桜木君だけではありませんよ。試合前に言ったとおりに全員出しますのでアップをしておいてくださいね」
「「「はい!」」」
安西の言葉通りに後半頭にはスタメンメンバーが全員交代していた。そして選手登録メンバー全員を起用して勝利したことで、湘北の選手層の厚さを全国に見せつけたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。