side:三井寿
無事に2回戦へと駒を進めた俺達と同様に、豊玉や山王を始めとした有力な各校も無事に勝利していた。
そして残る1回戦。俺達は陵南の試合の見学に来たんだが……。
「でかいな……あれで1年か」
陵南の対戦校である名朋工業のC……その1年である森重のでかさに驚いた。
「身長はともかく、身体の厚みは魚住並みだな」
「後はあのサイズでどれだけ動けるか……」
偵察及び見学に来ている各校からもざわめきが聞こえる中で試合が始まった。
注目の森重は開幕早々にド派手なダンクをぶちかました。だが……。
「ゴリ、今の魚住は……」
「あぁ、わざと跳ばなかったな」
桜木と赤木の会話に内心で相槌を打ちながらもコートから目を離さない。
「初対戦の相手ですからね。まだ余裕のある内に観察をしておきたいのでしょう」
「それに陵南は全国初出場です。どうしても固さは残る。そういう意味ではこの選択は正しい」
「もっとも、それも信頼出来るチームの大黒柱である魚住君がいるからこそ選べる選択。そうでなければ、観察している内に相手の勢いに飲まれてしまいかねません」
「田岡監督……全国でもその采配は健在ってところですか、ほっほっほっ」
安西先生の御高説に感心しながら試合を観ていく。試合開始から5分程で陵南が動いた。
「さぁ、陵南の反撃開始です。皆さん、つぶさに余さず観てください」
そこからは陵南が名朋を圧倒した。
森重も1年ながらも既に魚住と渡り合えるパワーは素直に凄い。だが、パワー以外の全てが魚住に遠く及ばなかった。それじゃ今の魚住には勝てない。
そう思っていたんだがそれから驚く光景を目にする。森重が笑ったんだ。
何度跳ね返されても、何度打ちのめされても、森重は楽しそうに笑いプレーを続ける。そんなあいつにつられるように名朋の選手達も諦めず懸命に戦った。
「1つ訂正だな」
森重はパワーだけじゃなかった。タフなメンタルの持ち主でもあったんだ。
だが、そんな森重と名朋の選手達を蹴散らすかの如く陵南はゴールを積み重ねていき、試合に勝利したのだった。
◆
後年、とある記者のインタビューに森重は次のように語った。
『うん?尊敬する選手?魚住さんだな』
『あぁ、現役の選手じゃないよ。今は板前の人。あれ?これ言ってもいいんだっけ?まぁいいか』
『俺さ、別に試合でチームが負けても自分が負けたとか思わないんだけどさ、でもあの人との勝負だけは違ったんだ』
『ほら、俺ってでかいだろ?縦にも横にも。だから大抵の相手には力だけで勝てたんだよなぁ。でも魚住さんには勝てなかった』
『柄にもなくフェイクをいれたりパスを出したりもした。でも手も足も出なかった。けど楽しかった。本気で楽しかった』
『それからかな。バスケに本気で打ち込み始めたのは』
『まぁそんな感じで尊敬しているのは魚住さんだ。これでいい?そんじゃ』
そう言って立ち去る森重の胸元ではキラキラとメダルが輝いていたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
森重のメダルの色は皆さんのご想像にお任せします。
また来週お会いしましょう。