side:三井寿
決勝リーグの組み合わせが決まった。湘北、海南、陵南、翔陽の4チームだ。
決勝リーグ初戦の相手は海南だと安西先生から聞かされチームに動揺が走ったが、俺はむしろやる気に満ちた。
神奈川の王者海南を喰うことが出来れば、その勢いのまま勝って全国に行くことも不可能じゃない。
正直に言って1年目から全国に行くチャンスが来るとは思ってなかったが、チャンスが来たならしっかりと掴み取らねぇとな。
いつもよりも一層怪我に気を付けると同時に気合いを入れて練習に励んでいくと、あっという間に日が過ぎて海南との試合の日がやって来た。
試合会場に入ると目に見えてチームの皆の表情が固くなる。
まぁ、予選トーナメントとはまた違った雰囲気だからな。皆が緊張しちまうのも無理はねぇか。
そんな皆の緊張は海南が姿を見せると更に高まった。
…流石は神奈川の王者海南ってところか。
まだアップをしてねぇのに身体が熱くなってきやがった。
まだか?早く身体を動かしたくてウズウズするぜ。
来た。アップの時間だ。
そしてアップを始めて1本目のシュートを撃った瞬間、俺は今日調子が良い事に気付いたのだった。
◆
side:赤木美和
うわぁ、三井君と倉石君以外の皆の動きが固い。
まぁ仕方ないか。こういうのは例え慣れていても少なからず緊張するものだしね。
三井君と倉石君以外は大会の決勝戦の様な大きな舞台の経験は無いし尚更かな。…あれ?剛憲はあまり緊張してないみたい。そういえばさっき安西先生がなにか声を掛けてたっけ。
そう思って少し見ていると、安西先生がゆっくりと1人1人に声を掛けていったんだけど、声を掛けられた皆は程よい感じに緊張が解れていったわ。
へぇ~、やるじゃん安西先生。流石は日本バスケ界の有名人だね。
うん、これで戦う準備は整ったわ。
さぁ行くわよ王者海南!うちが弱小って言われてたからって甘く見ないでよね!
◆
side:牧紳一
ようやく三井にリベンジ出来る日がやって来た。
しっかり汗をかいて身体を温め終えると試合の時間が待ち遠しく感じる。
予選トーナメントも勝つために戦って来たが、今日程に勝利に飢えた試合は無かった。
早く…早く始まれ。
待ち焦がれた試合の時間が来た。
試合前の整列で三井に視線を送る。
目が合うと身体の奥底から闘志が沸き上がってくる。
挨拶を終えてポジションにつこうとすると、キャプテンの兼田さんが俺の肩に手を置いてきた。
「牧、熱くなるのはいいが、マッチアップの相手を間違えるなよ。」
その一言を受けて俺は大きく息を吐く。
「ふぅ……すみません兼田さん、熱くなり過ぎてました。」
「気にするな。怪物と呼ばれていてもお前はまだ1年なんだ。なにかあったらフォローするのが先輩の役目ってな。」
バシッと背中を叩いた兼田さんがセンターサークルに入る。
俺は顔を張って気持ちを入れ替えると素早くポジションにつく。
ジャンプボール…兼田さんが制した。Gの下村さんがボールを拾うと俺にパスをしてくる。すると…俺のマークには三井がついてきた。
一瞬驚くがこれは望む展開。ドリブルで仕掛ける。
抜けない。流石は三井。
無理に抜くことに拘らずに、カバーに来ていた下村さんにパスを出す。
下村さんを経由してゴール下の兼田さんへ。
兼田さんがローポストから仕掛ける。…決まった。初得点は俺達海南がものにした。
攻守入れ替わって湘北ボール。赤木からボールは湘北PGの土橋さんに…渡らない?三井がPG!?
三井とのマッチアップを予定していた下村さんが三井のマークにつく。
三井が仕掛けた。下村さんが尻餅をつく。
(下村さんがアンクルブレイク!?)
中に切り込んだ三井が赤木にパスを送る。
赤木はお返しとばかりにローポストから仕掛けたが、兼田さんがブロックを決めた。
だが赤木のフォローに走っていた湘北キャプテンの石渡さんがボールを拾うと、きっちりとゴールを決められてあっさりと同点にされる。
そして直ぐにディフェンスに戻った三井は、コートの向こう側で俺を待つ。
高頭監督に目を向けると、高頭監督は頷いてから立ち上がる。
「下村!」
そして下村さんの名を呼ぶと、高頭監督は湘北の土橋さんを指差してマッチアップの入れ替えの指示を出した。
これで攻守共に三井とマッチアップになった。
試合前以上の闘志が身体を駆け巡る。
「待たせたな三井。」
「気にするな。待たせた分はプレーで返してくれ。」
「ふっ、今度は抜く…っ!」
俺は燃え上がる闘志に突き動かされる様にして二度三井にドリブルで仕掛けるのだった。
◆下村(しもむら):拙作オリジナルキャラ
海南の2年生で正レギュラーのG。1年時のウインターカップでベンチ入りしている。
強豪の海南のレギュラーらしくバスケ全般の能力がかなりあるが、特にスタミナが非常に豊富で相手に張り付いてスタミナを削るのが得意な選手である。
次の投稿は11:00の予定です。