side:三人称
ドリブル、パス、内外問わずにほぼ落とさないシュートと全てがハイクオリティーなオールラウンダーの三井。対して外はほぼ使わずに切り込んで勝負をするスラッシャータイプのエースである諸星。この二人をそれぞれ擁するチームの在り方は違う。それは両チームの監督の思考の違いでもあった。
三井を擁する湘北の監督である安西の思考は一言で言えば『One for All』選手一人一人がチームのために在ることを求めている。対する愛和学院の監督の思考を一言で言えば『All for One』エースのポテンシャルを最大限に引き出すためのチームであることを求めている。二人の思考の元はそれぞれの指揮、指導の経験にあった。
安西は大学バスケでその名を売る程に豊富な経験を持っている。そして大学生という肉体的、精神的にも十分に成長を遂げた選手達を率いる上で勝利の効率を求めた際に出た答えが『One for All』なのだ。
対する愛和学院の監督はというと彼は高校卒業以上の年齢の選手を指揮、指導した経験は無い。
高校生……多感な年頃で肉体的にも精神的にもまだまだ発展途上の青年である。そういった年頃の選手を率いて勝利の効率を求めた結果が突出した選手……つまりエースを軸としたチーム作りであったのだ。
これはどちらが正解なのかという答えはない。有り体に言ってしまえば各々の好みなのだ。
(流石は高名な安西先生……見事なチームを作り上げたものだ)
諸星を中心としたチームを作り上げて全国に導いてきた愛和学院の監督である彼……前田は湘北というチームのパフォーマンスの高さに半ば見惚れながら内心でそう呟く。
(それにしても三井か……どう指導したらあれほどの選手が育つんだ?)
前田はそう思考を巡らせる。もしこの前田の思考を安西が知ったらこう答えるだろう『特別なことは何も指導していませんよ』と。実際にそうである。
安西はただひたすら丁寧に、そして徹底的に基礎を指導してきただけである。その先は選手の自主性……主に居残り練習等を認めて怪我がない様に監督しただけなのだ。
基礎無くして応用なし。これを心底から理解するからこそ安西は大学バスケで名を売るほどの名将となり、強者ひしめく神奈川で戦うチームを率いる監督を楽しめるのだ。
(むっ?やはり諸星でも厳しいか……)
指導をしてきたからこそ前田は諸星の能力を熟知している。だからこそ三井攻略に頭を悩ませていた。
(うちは諸星ありきのチームだ。その諸星が遅れを取ればチームの士気に影響するが問題は三井だけじゃない……)
打倒山王を掲げて日々を積み重ねてきた。だからこそわかる。湘北は強いと。
(いいチームだ。だが、そうやすやすとは負けてやらん)
もちろん勝利は諦めていない。だが前田はこの試合の結末を予感してしまったのであった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。