三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第171話『飛躍の兆し』

side:三井寿

 

 

 愛和学院に勝利した俺達湘北は勢いに乗り準々決勝にまで駒を進めたんだが、その準々決勝の豊玉戦がある今日はある意味今大会で一番の正念場だ。

 

 その理由は大会のスケジュールの関係で今日は準々決勝と準決勝の2試合を行うからだ。

 

 しかも山王が先に準決勝進出を決めている。つまり俺達は山王よりも少ない休憩時間で準決勝を戦うことになる。

 

 だからだろう。ここで安西先生は賭けに出た。

 

「準々決勝はこのスターティングメンバーで行きます」

 

 安西先生が提示した豊玉戦のスターティングメンバーはCに角田、PGに宮城、SGに東、PFに桜木、SFに流川の5人。つまり俺達3年を1人も入れないことを選択した。

 

 

「流川君、今日はフルのつもりでペース配分してください」

「ウス」

「宮城君、豊玉はラン&ガンの超攻撃的なバスケです。つられて熱くなりすぎないように」

「はい!」

 

 他にも安西先生は1人1人に指示を出していく。

 

「君達は強い。今日のメンバーでもこの舞台で戦える。勝てることを証明してきてください」

「「「はい!」」」

 

 5人が安西先生の檄で士気を高めてコートに入っていくと豊玉のメンバーもコートに入っていく。豊玉は……ベストメンバーだった。

 

「やはり……北野ならそう来る」

 

 どうやら豊玉の選択を安西先生は読んでいたようだ。

 

 

 

 

side:宮城リョータ

 

 

 試合開始のジャンプボール。カクではなく花道が跳ぶ。花道が制してうちのオフェンスからだ。ボールをもらい豊玉の板倉ってやつと対峙しながらどうするか考える。

 

(流川への指示を考えると前半は抑え気味にする方がいいか?いや、あえて印象付けてからの方がいいか)

 

 ハンドフェイクを1つ入れてからドリブルで仕掛ける。一歩抜け出す。このまま行けそうだが、流川にパスを……いや。

 

(予定変更。このまま行く!)

 

 視界の端に映る流川。パスの誘惑を振り切り中に切り込む。すると花道とマッチアップしていた……岸本ってやつがフォローに動いた。

 

(花道がフリー……でもこのまま!)

 

 先ずは俺に注目を集める。そんな思惑を脳裏に浮かべつつ上体を勢いよく起こしながら左手を上げる。するとレイアップだと勘違いしつられた岸本が跳んだのを尻目にその場でストップ。そのストップで追ってきていた板倉が勢いを止めきれず俺を追い抜き完全にフリーに。完璧な状況で俺はジャンプシュートを打ち先制点を決めた。

 

「よし!」

 

 右拳を軽く握ると豊玉のやつらからの注目が俺に集まる。

 

(とりあえずは狙い通りだな)

 

 ボールを持った板倉とマッチアップ。すると板倉が声を掛けてきた。

 

「やるやん」

「まぁな」

「まぁ、俺も負けてへんけど……な!」

 

 俺より身体の大きい板倉はその大きい身体を預けるようにしてドリブルで抜きにくる。腰を落とし押されないようにしながらもついていきコースを塞ぐ。すると板倉は急制動で止まろうとする。

 

(そう簡単に振られるか……っ!?)

 

 俺も止まろうと踏ん張ろうとした次の瞬間、本当に軽く転ばない程度にだが脇腹を押された。

 

 すると板倉はピタッとその場で止まるが俺は一歩二歩と足が出てしまい板倉がフリーに。

 

(濃い顔のくせにそんな細かいテクニックを使うのかよ!)

 

 これをやられたのは初めてじゃない。居残り練習とかで時折三井さんにやられたことがある。だが試合でやられたのはこれが初めてだった。

 

(なるほど……そういう強かな相手ってことかよ)

 

 お返しとばかりにジャンプシュートを決め返される。

 

「やるじゃねぇか」

「せやろ?どんどん入れまっせぇ」

 

 上手くいったと思った矢先の出来事。顔を上げてコート全体を見渡す。大丈夫、見えてる。

 

 ズマ(東)からボールをもらい指を一本立てながらボールを運ぶ。この景色はPGの特権だ。

 

「一本、じっくり!」

 

 まだ試合は始まったばかり。今度は相手を焦らすぐらいゆっくりいくとしますかね。




これで本日の投稿は終わりです。

師走で少々忙しいので今年の投稿はこれで終わりとしたいと思います。

また来年お会いしましょう。
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