三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第177話『挑戦者と孤高の王者の差』

side:三井寿

 

 

 陵南の準決勝が終わりコートの整備も終わるといよいようちと山王の準決勝だ。両チームのスタメンがコートに入ると両チームの間でバチバチと火花が散る。

 

 共にベストメンバー。相手に不足はねぇ。まぁうちはベストメンバーの1人とも言える桜木がいねぇが、あいつがいないなら、いないなりの戦い方がある。問題はない。

 

 いや、1つだけ問題があるか。

 

「赤木、熱くなり過ぎるなよ」

「あぁ、わかってる」

 

 最近は鳴りを潜めてはいるが、赤木は同格や格上の相手とマッチアップすると周りが見えなくなる程に熱くなる癖がある。

 

 はまれば本当にいいパフォーマンスを発揮するんだが、相手に上手くいなされると盛大に空回りする諸刃の剣でもある。そこら辺を上手くコントロールするには今の赤木でもまだまだ経験不足。長い目で付き合っていくしかないだろう。

 

 それはともかく試合開始だ。ジャンプボールは赤木が制してうちのオフェンスから。ボールを運んだ安田は深津と対峙しじっくりと時間を使っていく。

 

 そうしてターンオーバーまで残り10秒になったその時、ひょいと不意に安田が3Pシュートを撃った。

 

「……大したクソ度胸だぜ」

 

 県予選から通じて初めて撃った3Pシュート。それを全国大会の準決勝という大舞台で見事決めてみせたのだった。

 

 

 

 

side:河田雅史

 

 

「……こいつはマズイな」

 

 まだ前半7分。けど確実に湘北に押されている。

 

 開幕の奇襲はまだいい。あれは安田が上手かっただけだ。

 

 だがその後がどうもいかん。随所の競り合いで尽く負けちまう。こりゃあの雑誌記者に言った経験不足は沢北だけじゃねぇってことか。

 

 県下じゃ相手になるところがない。だから普段の練習試合の相手はだいたい地元の大学生達だ。

 

 格上と言える相手との練習はたっぷり積んできた。格下相手に勝ちを拾う力は間違いなく全国一だっていう自負がある。

 

 だが同格との競り合いがこうまで不得手だったとはなぁ……。長く王者でいた弊害ってところか?

 

 俺はなんとか踏ん張れちゃいるが深津達は振り回されちまってる。沢北にいたっちゃ振り回されるだけじゃなく縮こまっちまってるときたもんだ。これじゃ勝てる試合も勝てん。

 

 チラリとベンチを見るが、監督はまだ動くつもりがないらしい。早いとこ手を打たんと手遅れになりますぜ。

 

「おっといかん」

 

 沢北の奴が無茶な態勢でシュート撃ちやがった。そんなもん入るわけなかろうに。

 

 直ぐにリバウンドのためのポジションに入ろうとするが、また邪魔をされる。湘北のGの倉石だ。こいつが本当にいい動きをする。

 

 一歩遅れた俺は野辺にリバウンドを任せるしかないが、その野辺は赤木とのポジション争いで抑え込まれる。

 

(赤木と力勝負したってしょうがねぇだろうに)

 

 あの魚住とバチバチにやり合ってきたのが赤木だ。正面からぶつかるんじゃなく上手くいなさにゃならん。

 

 だというのにムキになっちまってまぁ……。まぁこれは野辺だけじゃなくチーム全体に言えることか。

 

 赤木にリバウンドを取られ返しの湘北オフェンス。そこで三井に3Pをシュート決められたところで漸く監督がタイムアウトを取った。

 

「うし、気合いを入れて巻き返すとするかね。手遅れじゃねぇといいんだが……」

 

 その前に沢北の目を覚まさせるのが先かと思い、俺は沢北の背中を思いっきり平手で張るのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

魔境KANAGAWAで競い合ってきた湘北と孤高の山王の差といった感じでしょうか。

また来週お会いしましょう。
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