三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第181話『決戦の始まり』

side:三井寿

 

 

 インターハイ全国大会決勝戦の朝が来た。ここまで大会を勝ち抜いてきて多少の疲労感は残っている。だが逆にその疲労感が適度に身体の力を抜いてくれる。

 

 そして今日戦うは全国大会決勝戦という大舞台。モチベーションは自然と高まってくれる。

 

 今望めるベストの状態を持ってくることは出来た。後は試合で勝つだけ。湘北バスケ部に入部したあの日の宣言を、誓いを果たすだけだ。

 

 3位決定戦は順当に山王が勝利していよいよ俺達の番だ。コート整備を見届け試合前のアップに入る。

 

 数回3Pシュートを撃つと手応えを感じる。今日は落とす気がしないと。

 

 コート上を見回す。赤木が、木暮が、倉石が淡々とアップをしている。だが目だけはやたらとギラギラしていた。

 

「……本当に頼もしくなったもんだ」

 

 緊張が無いわけじゃない。けど緊張を感じさせない程にあいつらは自分なりに緊張をコントロールする術を身に付けたんだ。

 

 アップの時間も残り僅かとなった時、キャプテンとしてベンチ前に集合を掛ける。

 

「朝のミーティングで伝えるべきことは伝えました。なので一言だけ……君達は強い」

 

 その一言が俺達を高揚させてくれる。自信を持たせてくれる。この場で俺達にその一言以上に相応しい言葉はない。

 

「俺達は強い!」

「「「応ッ!」」」

 

 

 

 

side:安西

 

 

 万感の思いはあれどもそれ以上に血が騒ぐ。勝負師としての血が。

 

 それこそ試合に出る選手達以上にこの決勝戦が楽しみだと感じているかもしれませんね私は。未熟と自身を戒めるべきか、らしいと笑うべきか迷うところです。

 

 チラリと目を陵南ベンチへと向ける。

 

 練習試合も含めれば彼等とはかなりの数を戦ってきました。故に互いの手の内はほとんどわかっています。だからこそ駆け引きの余地がある。

 

 田岡君の選手育成手腕は見事なものです。その点においては私以上かもしれません。しかし……。

 

「指導者としてはともかく、監督としてはまだまだ負けるつもりはありませんよ」

 

 

 

 

side:三人称

 

 

 インターハイ全国大会決勝戦。長い夏を締め括る最後の試合が始まろうとしていた。

 

 陵南はCに魚住、PGに植草、Gに池上、PFに福田、Fに仙道のいつも通りのベストメンバー。

 

 対する湘北はCに赤木、PGに安田、Gに倉石、SFに三井、PFに桜木という形。ロングシュートを主体とするのが湘北の戦術の1つである。その戦術における要の1人である木暮が控えスタート。田岡は小首を傾げながら片眉をつり上げた。

 

(序盤はインサイドを重視か?いや、そう決めつけるのは早計か)

 

 整列し試合開始の挨拶を終えるとジャンプボール。魚住が制するとボールは植草が確保するが、そこを奇襲するかの如く安田がスティールを決める。だが池上が素早くフォローに入った。

 

 池上を無理に抜きに行かずじっくりと時間を使っていた安田だが不意にボールを前方に……リング付近へと強く押し出すようにしてパスを出した。

 

 するとそのパスに反応した誰かが跳び上がる。特徴的な赤頭が目立つ。桜木花道だった。

 

 空中でパスを受け取った桜木はボールをそのままリングに叩きつけるようにしてダンク。アリウープが決まった。

 

 開幕の奇襲。それも陵南の仙道と福田のコンビが得意とするアリウープを決める。宣戦布告とも言えるワンプレーだった。

 

 その宣戦布告を受け取った陵南メンバーから気炎が上がる。試合はまだ始まったばかりだが、早くも熱を帯び始めたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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