side:三人称
アウトサイドからのシュートを徹底する湘北とペイントエリア付近でのシュートを主とする陵南。そんな両極端とも言える試合の前半、主役となっていたのは木暮だった。
仙道が三井の3Pシュートを警戒しディフェンス強度を高めパスすら出せないようにする。そうすることで必然的に安田と木暮が3Pシュートを撃つ機会が増えていく。
そしてその2人のマッチアップ相手。安田は越野で木暮は福田……そのマッチアップ相手が木暮が前半の主役となった大きな要素の1つだった。
福田はディフェンスがはっきりと苦手である。もっとも去年までははっきりと下手くそと言われるレベルだったものを苦手と言われるレベルまで成長出来た……もといさせた田岡の育成手腕は見事だが、ことこの舞台のおいては紛れもなく陵南ディフェンスの穴となっていた。
ストップ&ゴーで福田を揺さぶりマークを外す。そして得意な角度でボールを貰うと慣れ親しんだリズムで3Pシュートを撃つ。練習で幾度となく繰り返し考えずとも出せる身体に刻み込まれたその動きは、玄人の目から見てもとても美しいものだった。
木暮の指から放たれたボールがまたスウィッシュで決まる。すると観客席からざわめきと共に大きな歓声が上がる。
「すげぇ!木暮ってあんなにいいシューターだったのかよ!?」
「三井の影に隠れてただけだったのか!?」
観客がそう驚くのも無理は無いだろう。木暮はこの前半で湘北のオフェンス機会の過半数で3Pシュートを撃ち、その半分以上を決めているのだから。
(今日はよく入るな。調子がいいのかな?)
そう考える木暮だが自らパスを要求することはない。あくまで自身の3Pシュートもオフェンス時の選択の1つと思っているからだ。
(俺は決してバスケが上手い方じゃない。外して元々。リバウンドは赤木と桜木が取ってくれる。福田にブロックされるとかのミスをしても三井と安田がなんとかしてくれる)
(だから俺はチャンスがあったらただ3Pシュートを撃てばいい。俺に出来るのはそれだけだ)
スクリーンに入り安田や三井をフリーにし3Pシュートを撃つチャンスを作る。しっかりと走り福田を振ってマークを外しパスを貰える状況を作る。基本に忠実な動きをただひたすらに繰り返していく。
すると不意に主審の笛が鳴る。前半終了の笛だった。
(あぁ、もう前半が終わったのか……そうだ、状況は?)
ふと木暮はスコアボードに目を向ける。
「よかった。リードしてる。後半も頑張らないとな」
そんな謙虚なことを呟く木暮だったが、前半のMVPは間違いなく彼なのであった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。