三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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第186話『勝負』

side:三井寿

 

 

 一度は陵南に傾きかけた流れを止めることが出来た。だが文字通り力技で流れを持っていかれた。魚住のあのパワープレイ以降、じわじわと点差を詰め寄られている。

 

 安田から木暮にパスが出る。だが越野がピッタリと張り付いているから3Pシュートが撃てない。

 

 木暮が一度ボールを安田に戻す。ボールを持った安田と福田が対峙。ディフェンスが苦手な福田は安田にいいように翻弄されるが、むしろ割り切ってフェイク全てに反応してなんとか抑えようとしている。

 

 そんな福田の泥臭いディフェンスを振り切った安田が3Pシュートを撃つ。外れてリバウンド勝負。

 

「フンッ!」

 

 同時に跳んだ赤木と桜木を弾くようにしてボールをもぎ取った魚住。その魚住から速攻に走る福田にパスが出る。

 

 そしてボールを持った福田はディフェンスで振り回された鬱憤を晴らすようにボールをリングに叩きつけた。

 

 一度流れを切りたい。そう思ったところでタイムアウト。流石だ。いいタイミングです安西先生。

 

「仕掛けます。安田君と木暮君、交代です。宮城君、流川君、準備出来てますね?」

「「はい!」」

 

 安田と宮城を代えることでうちのオフェンスのリズムが変わる。それで陵南を揺さぶるのが狙いだろう。けど木暮と流川の交代の狙いは何だ?

 

「戦術を変更します。ラン&ガンです」

 

 確かにシューター3枚戦術には慣れられてしまった。ここで戦術を変えるのは有効だろう。でも……それだけが理由か?

 

「陵南は1回戦からここまで、ほとんど選手交代をせずに戦い抜いてきました。対して私達は選手交代をよく利用して勝ち抜いてきました」

 

 安西先生の言う通りだが……そうか!

 

「削り合いですね?」

「えぇ。陵南の主力メンバーには間違いなく疲労が溜まっています。今はまだそれが表に現れていません。なので無理矢理引きずり出します」

 

 エグい作戦だ。けど今の場面ならとんでもなく有効だぜ。

 

「宮城君、というわけですので、陵南を休ませないようにガンガン攻めてくださいね」

「はい!任せてください!」

 

 

 

 

side:田岡茂一

 

 

 おそらく戦術の変更と選手交代をしてくる。そこまでは読める。だが、どうくるかまでは読めん。

 

(まさかシューター4人などということはあるまいが……)

 

 そう思うものの、そのまさかがありそうなのが安西先生の怖いところだ。

 

 タイムアウトが終わり選手達がコートに戻っていく。湘北は安田と宮城が、そして木暮と流川が交代した。

 

 私は直ぐにマークの指示を出す。越野を宮城に、池上を流川に、福田を桜木につける。

 

「むっ?これは……ラン&ガン?」

 

 湘北の選手達の動きを見てそう判断する。

 

 シューター3枚と比べれば特に珍しい戦術ではない。選手達も特に問題なく対応出来るだろう。まぁ、あちらに合わせて走る量が増え……っ!?

 

「それが狙いか!」

 

 うちはどこよりも走ってきたチームだ。故に通常ならば消耗戦は受けて立つ。だがことこの場面においては最も困るのがその消耗戦なのだ。

 

 うちはインターハイの試合のほぼ全てを固定の主力メンバーで戦ってきた。その目的は色々とあるが、そのおかげでここまで勝ち上がってこれたという確信がある。

 

 だがその代償として主力メンバーは疲労を多く蓄積させており、主力以外の選手達はこの大舞台に立つにはまだ力不足、経験不足という状況だ。

 

(どうする?マンツーマンを止めてボックスワンに変えるべきか?)

 

 幸いにもまだ選手達は問題なく走れている。だが、いつ蓄積している疲労が表に出てきてもおかしくない。

 

 頭の中で考えられる状況を想定していく。どれも良くないものばかり。だが……。

 

「……ふっ、悩むことなどなかったな」

 

 その時が来たのなら己が成すべき事を成す。ただそれだけだと心の内で決めたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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