side:三井寿
早い展開での攻め合いが続いていく。じわじわと詰め寄られる点差に少し焦りが出るが、その焦りを抑え込みやるべき事をやる。
そうして後半も半ばに差し掛かり6点差にまで詰め寄られたその時、待ち望んでいた状況が訪れた。足を縺れさせて福田が転んだのだ。
その光景を見た田岡監督は直ぐに福田と植草を交代。これで陵南のオフェンス力は落ちたが、俺達はまだ削り合いを続行する。
福田が抜けた分を埋めようと仙道が気炎を上げる。そんな仙道の活躍で後半残り5分辺りで2点差にまで詰め寄られてしまった。だがその代わりに今度は仙道の体力が尽きた。レイアップで得点を決めて着地をした仙道がよろける。
田岡監督は福田と同様に直ぐ仙道を交代させた。これで陵南のスコアラー2人がいなくなった。試合の終盤にきて主導権を握れるのは大きい。
ここで安西先生がまた動く。流川と宮城を下げ倉石と安田をコートに送り出してきた。倉石から一言二言とやるべきことの伝言を受ける。
試合が再開されると赤木、桜木、倉石の3人がゴール下に集まる。この3人で魚住を封じるというのが安西先生の狙いだ。
そしてたっぷりと時間を使って俺と安田で3Pシュート、あるいはミドルシュートを狙っていく。
越野が安田に、そして池上が俺のマークにつく。残りのメンバーがペイントエリアで鎬を削る光景を視界に入れつつ、足を使い池上を揺さぶっていく。
「三井さん!」
パスを受け取りフェイクを1つ。そしてステップバックからディープスリーを撃つ。スウィッシュで決まったが視界の端に驚く光景があった。なんと赤木、桜木、倉石の3人でも完全には魚住を封じることが出来てなかったんだ。
更に魚住は3人に囲まれながらも得点まで決めてみせる。……本当にすげぇ奴だ。
けど勝負ってのは残酷なもの。仙道と福田を欠いた陵南では俺達に抗いきれずにじわじわと点差が広がっていく。
そして……。
『ピーッ!』
試合終了の音が鳴り響き、俺達は全国制覇を成し遂げたのだった。
◆
side:三人称
試合後のインタビューで田岡茂一は次のように答えている。
「選手達は最善を尽くしました。敗因は私です」
「ご指摘の通りに準決勝等の点差が開いた試合で主力を温存する。そういったことを行っていれば先程の決勝戦での出来事は起こらなかったかもしれません」
「ですがこの全国大会で戦ったどのチームも決して油断出来ない相手達でした。点差が開いた試合はたまたま流れを掴み、選手達が全力で戦った結果点差が開いていた。それだけなのです」
「決勝戦の舞台で湘北の新戦術に対して有効な対応策を打つことが出来なかった。この全国大会を最後まで戦い抜けるチームを作り上げることが出来なかった。全ては私の責任です」
「もう一度言います。選手達は最善を尽くしました。決勝戦の敗因は私にあり、その敗戦の責任は全て私にあるのです」
敗戦の原因と責は己にあるとはっきり告げた田岡茂一。そんな彼に対して監督解任の声はほんの僅かしか上がらず、むしろこのインタビューを知った多くの中学生バスケプレイヤー達が陵南入学希望の声を上げるようになったのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。