三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日は3話投稿します。

本日投稿1話目です。


幕間2『応援』

side:堀田徳男(ほった のりお)

 

 

湘北高校に進学すると小学校時代のダチだった三っちゃんと再会した。

 

三っちゃんはあの頃から運動神経抜群で皆のヒーローだった。けど、そんな三っちゃんが湘北に入って直ぐに怪我をして病院に入院した。

 

俺はいても立ってもいられずに入院した三っちゃんの見舞いに行ったが、どの面下げて会えばいいのかわからなかった。

 

俺は小学生時代から声楽をやってたんだが、中学生になった頃に声変わりすると、自分の音がわからなくなって挫折。そして不良になっちまった。

 

それからは同じ中学の怪我とかで挫折した高嶋(たかしま)、徳田(とくだ)、西本(にしもと)達とつるんでやってきた。

 

不良になった俺達だが一生懸命に部活とかをやっている連中に迷惑を掛けた事はない。挫折しちまったけど、かつては俺達も本気でやっていたことだからだ。

 

「もしかして徳男か?そんなとこで何してんだ?」

 

三っちゃんがいる病室の前で入室を戸惑い続けていると、三っちゃんから声を掛けられた。

 

ここまで来ておいて逃げるわけにもいかず、俺は三っちゃんがいる病室に入った。

 

そこからは俺の戸惑いがなんだったのかと言いたくなるほどに話が弾んだ。

 

小学校時代の話に始まり、久し振りに俺の歌を聞きたいと言った三っちゃんのリクエストに応えて歌って看護婦さんに注意されたり、あんなに腹の底から笑ったのは久し振りだった。…まぁ、笑い声がでか過ぎてそれも注意されちまったけどな。

 

それから話が一段落したところで帰ろうと思ったんだが、不意に三っちゃんが…。

 

「なぁ徳男、バスケ部の応援にこねえか?」

 

そう誘って来たんだ。

 

なんでも三っちゃんが言うには、湘北バスケ部は弱小だから応援する奴等が少ないらしく、良く通る俺の声で応援して欲しいそうだ。

 

嬉しかった。俺の声が必要とされたのが。

 

けど俺は変わっちまった俺の声に自信が持てない。

 

だから三っちゃんには応援はともかく、試合を見に行く事を約束した。

 

そして約束通りに試合を見に行った。

 

圧倒された。選手達の熱意に、応援する人達の熱量に。

 

思わず口を開いて声を出そうとしたが直ぐに口を閉じた。

 

半端に挫折した俺が本気の人達と同じ様に応援していいのかと疑問に思ってしまったからだ。

 

そのまま応援出来ぬままに俺は試合を見に行き続けた。

 

そして転機の日が訪れる。

 

湘北と海南の試合の日だ。

 

県内トップと言っても過言じゃない強豪の海南との試合で、三っちゃんは大活躍をし続けた。

 

けどそんな三っちゃんも試合が後半になると、スタミナが切れて足が止まり始めたんだ。

 

素人目に見てもチームとしては海南の方が上。三っちゃんが動けなくなったらもう勝ち目は無いと思った。

 

でも…三っちゃんは諦めなかった。

 

懸命に足を動かして何度もシュートを決めていく。そんな三っちゃんの姿に胸を打たれた。

 

だが会場を包む応援は海南のものばかり。

 

気が付けば俺は席を立ち上がり…。

 

「湘ー北!」

 

腹の底から声を出して湘北を応援した。

 

「湘ー北!」

 

バスケの応援の作法なんてわからない。

 

だからただひたすらに大きな声で、海南の応援の声を消し飛ばす勢いで声を張った。

 

「湘ー北!」

「湘ー北!」

 

俺の応援に高嶋、徳田、西本が続いてくれた。

 

そこからは試合が終わるまで応援をし続けた。

 

その後、試合は湘北が負けてしまったが、俺の中で燻っていた何かを吹っ切る事が出来ていたのだった。

 

 

 

 

side:堀田徳男

 

 

「応援団?」

「はい、バスケ部を応援したいので、応援団を作る許可をください。」

 

海南との試合を応援した翌日、俺達は生徒指導の高安先生の下に足を運んだ。

 

理由は本格的に三っちゃん達を応援するためだ。

 

「却下だ。」

「…何でですか?」

「私立ならともかく、うちではあからさまにどこかを贔屓するわけにはいかん。堀田、お前達はバスケ部以外を応援するつもりはないんだろう?」

 

高安先生の言葉に俺達は項垂れる。

 

また本気になれるものを見付けたのに…。

 

「…他校の生徒と問題を起こすなよ。」

「えっ?」

「お前達がバスケ部の応援に行くのを見逃してやるって言ってるんだ。公休扱いにはせんがな。」

 

高安先生の言葉を理解した俺は頭を下げる。

 

「ありがとうございます!」

「テスト期間中は流石に止めろよ。それと赤点を取ったら容赦なく補習を受けさせるからな。」

「はい!」

 

高安先生は大きなため息を吐くと、手でシッシッと俺達を追い払う仕草をする。

 

「わかったらさっさと出ていけ、俺は早く一服したいんだ。」

「はい!失礼します!」

「おう、他の生徒には言うんじゃねぇぞ。」

 

煙草を咥えながらヒラヒラと手を振る高安先生に、俺達は深々と頭を下げたのだった。




◆堀田徳男(ほった のりお):原作キャラの一人。三井応援隊。

 不良にならなかった三井とどうやって絡めようかと妄想した結果、元友人で挫折からの不良化という設定に落ち着いた。


◆高嶋(たかしま):原作キャラの一人。眼鏡が特徴的なキャラ。

 堀田の仲間の一人。挫折理由は読者の皆さんの心の中に…。


◆徳田(とくだ):原作キャラの一人。屋上で寝てた流川を蹴ったキャラ。

 堀田の仲間の一人。挫折理由は読者の皆さんの心の中に…。


◆西本(にしもと):原作キャラの一人。初登場時に堀田と一緒にいたキャラ。

 堀田の仲間の一人。挫折理由は読者の皆さんの心の中に…。


次の投稿は9:00の予定です。
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