三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

28 / 201
本日投稿3話目です。


幕間3『神奈川予選後の牧と藤真』

side:牧紳一

 

 

インターハイ神奈川予選が終わった。全国に駒を進めたのはうちと翔陽。結果だけを見れば強豪のうちと翔陽が全国に出場した形で順当だが、湘北も陵南も侮れないチームだ。

 

先ずは湘北。三井が引っ張り、赤木が支えて湘北は成長していくだろう。

 

2年後…いや、1年後にはうちと同様に全国でも上を狙えるチームになるかもしれない。いや、必ずなる。

 

そう考えると腹の底から闘争心が沸き上がってくる。

 

そして陵南だが…キーマンになる選手が足りない。後1人でいい。魚住が孤立せずにいられる存在感を持った選手が出てくれば、陵南は全国を狙えるチームになる。

 

贅沢を言えば俺や三井とやりあえる選手だが…そこは田岡監督が考える事だ。高頭監督とライバルらしいから、このままやられっぱなしではいないだろう。

 

さて、予選が終わったからといって気を抜くわけにはいかん。まだ全国が残っているからな。

 

それに高頭監督は全国への弾みをつけるために、合宿ではサプライズを用意しているそうだ。

 

閉会式の後に安西先生と話していたことが関係あるとすると…ふっ、楽しみになってきたぜ。

 

まぁそれはともかくだ。今日はオフだから湘南の波に乗りに行くとするか。

 

 

 

 

side:藤真健司

 

 

決勝リーグの全ての試合が終わった結果、翔陽はギリギリで全国出場を果たした。

 

湘北との得失点差は僅かで、何かが違っていたら全国を逃していたかもしれない。

 

そう考えると閉会式が終わった今でも冷や汗が流れる。

 

閉会式が終わった翌日のミーティングでは、三淵監督のインターハイ予選決勝リーグの各チームの評価を聞くことが出来た。

 

三淵監督が言うには陵南はチームの形は出来つつあるが、もう一押しが足りないそうだ。

 

確かに陵南との試合には俺のせいで負けてしまったが、陵南には海南や湘北には感じた怖さを感じなかった。

 

おそらくその怖さは牧や三井といったエース格の選手の存在が関係しているんだろう。

 

そう考えると確かに陵南にはチームとしてもう一押しが足りないな。

 

次に三淵監督から見た海南だが正に盤石だそうだ。

 

神奈川ナンバーワンセンターの兼田さんを始め、チーム全体が強豪校を体現するかの如く…と語っていた。

 

けれど牧のカットインを基点としたバスケは、三淵監督の好みじゃないらしい。

 

じゃあ逆に好みのバスケはと問うと、俺がやったパスで繋ぐバスケとのこと。

 

あれは俺の技術じゃ相手を抜けないからやったことなんだけどな。

 

そんなことを三淵監督に言うと…。

 

「選手個人の器量に任せるバスケも否定はせんよ。けど儂の好みは凡人でも出来るバスケよ。出来ることを確実にやる。これはバスケに限らず大事なことじゃぞ。」

 

出来ることを確実にやる。うん、確かにそれが出来たからこそ湘北との試合に勝つことが出来た実感がある。

 

対して湘北は試合の終盤に疲れやプレッシャーから、出来ていた筈のことが出来ずミスを繰り返していた。

 

そんな湘北の選手の中でも誰よりも疲れていた筈の三井には、ミスらしいミスは無かった。

 

それだけを見ても三井は凄い選手だ。

 

さて最後に湘北に対する三淵監督の評価だが…三淵監督曰く、変革者だそうだ。

 

「近年、あれほどロングシュートを多用するチームは珍しい。というのも3Pシュートは確率の低いシュートだからだ。確率の低いプレーをしていれば当然ミスが増え、やがて自滅してしまう。」

 

「だというのに湘北は全国まで後一歩のところまで来てみせた。…これがどれほど恐ろしいことか分かるか?これまでのバスケの常識や概念を覆してしまう程にありえないことなんじゃ。故に変革者よ。」

 

この話を聞いた後に湘北との試合のスコアシートを見てみると、驚くことに三井の3Pシュート成功率は40%を超えて50%に迫っていた。

 

おそらくインターハイ予選を通じて見てもそう大差はないだろう。

 

…正に三井はバスケの常識や概念を変えかねない異質なシューターだ。

 

待てよ?三淵監督は三井個人ではなく湘北を変革者だって…。

 

そこまで考えると鳥肌が立った。

 

そうだ。そんな確率の低いバスケなら、普通は監督が指導するなり修正するなりする筈だ。

 

つまり今の湘北のバスケを安西先生も認めているんだ。

 

気が付けば身体が震えていた。

 

この震えが恐れからなのか武者震いなのかはわからない。

 

わかることは唯一つ。無性に身体を動かしたくなったことだけだ。

 

柔軟を終えた俺は走り出す。ただひたすらに走り続ける。

 

この走り続けたその先に、牧や三井の背中が見えてくると信じて。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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