side:高頭力
例年ならば夏の合宿は海南大学のバスケ部と行うのだが、今年は湘北と陵南に声を掛けてみた。
目的は牧と兼田を始めとした教え子達のスキルアップと、今後に備えて湘北や陵南の選手達をじっくりと観察することだ。
先ず教え子達のスキルアップは、主に湘北の選手達と競わせることで図る。
湘北にはオールラウンダーなシューターの三井に兼田と渡り合える赤木だけでなく、3Pシューターの木暮にディフェンスのスペシャリストの倉石もいる。
彼等は全員まだ1年生だ。
彼等と競うことは同級生だけでなく上級生にも良い刺激になるだろう。
そして観察対象は主に湘北の選手達だが、陵南の選手達も当然観察していく予定だ。
陵南の魚住は体力技術共にまだ未熟だが、彼の身長の高さを考えれば県内はおろか全国レベルのCに成れるだけのポテンシャルは十分にあるだろう。…本当に成れるかどうかは田岡先輩の指導力次第だな。
おっと、噂をすればなんとやらだな。田岡先輩が陵南の選手達を連れてやって来た。
俺は田岡先輩の前まで進み握手を交わす。
「田岡先輩、今回はよろしくお願いします。」
「あぁ、よろしく頼む。」
短く挨拶を済ませた田岡先輩は陵南の選手達にアップを始めさせる。
ふむ、ダラダラせずに機敏に動いている。普段から随分と扱いているんだろうな。
むっ?安西先生が来られたか。
湘北の選手達と共に歩いてくる安西先生の所に向かう。
おや?安西先生…少し痩せたか?
「安西先生、今回はよろしくお願いします。」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。」
安西先生も手短に挨拶を済ませると選手達にアップをさせていく。
ほう…昨年まで弱小と呼ばれていたとは信じられんぐらいに、良い雰囲気でアップをしていくな。うむ、これは確実に手強くなる。
楽しくなりそうだ。
そう考えながら教え子達の所に戻ると、教え子達を見回しながら話し出す。
「お前達、しっかりと汗をかいたか?」
「「「はい!」」」
教え子達の返事にニヤリと笑みを浮かべる。
「湘北、陵南の選手達から吸収出来るものは可能な限り吸収しろ。そして成長して全国を取りにいく。いいな?」
「「「はい!」」」
◆
side:田岡茂一
高頭の声掛けで始まった今回の三校合同合宿。実に得る物の多い合宿だ。
魚住は赤木や兼田と競い、池上は三井や牧の動きを見て学ぶ事で着実に成長していっている。もちろん他の教え子達もだ。
更に今回の合宿では他校の選手とチームを組ませて5分ハーフの紅白戦をやらせている。
即席のチームで連携することは難しく、バスケでの思考力や判断力を養うことに繋がる。ふふ、冬が楽しみになってきたな。
それはそれとして今目の前には俺を楽しませてくれる光景がある。
それは…魚住と三井がチームを組んだ光景だ。
三井が魚住にパスを出す。それもゴールリングの上にだ。
それを魚住がアリウープでダンクを決めると、年甲斐もなくゾクゾクとした高揚を感じてしまった。
アリウープを決めた魚住が自分の手を見つめている。
今までとは違うバスケの手応えに困惑しているのだろう。
だが…。
「魚住、それがお前の可能性だ。お前はまだまだ上手くなれる。」
手を握り締めた魚住は笑顔でプレーに戻る。
それにしても…。
「この短時間で魚住の力を引き出すか…。とんでもないバスケセンスの持ち主だな三井は。」
魚住の成長は陵南にとって大きい出来事だが、おそらくこれは三井なりの赤木への激励なのだろう。
その証拠に『お前もやってみろ』と言わんばかりに三井は赤木を指差しているからな。
「やれやれ、指導者として形無しだなこれは。」
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。