本日投稿1話目です。
side:牧紳一
「どうだ?」
「まだ差があるな。ディフェンスの上手い奴なら反応してくるぞ。」
合宿の合間の自主練習の時間に俺は、三井にクロスオーバーを教えてもらっている。
元々駄目もとのつもりだったんだが、三井に頼んでみるとアッサリと教えて貰えた。
代わりに俺のトレーニング方法を教える事になったがな。
「な、なぁ三井、僕の方はどうかな?」
俺と同じ海南の1年の宮益が三井に声を掛ける。
宮益はハッキリ言って特になにか優れたところがあるヤツじゃない。
そんな宮益は海南のユニフォームを勝ち取る手段として、3Pシューターになる道を選んだ。
宮益は最初木暮の所に行ったらしいんだが、その木暮から三井を紹介された形で今に至っている。
「宮益はとにかく数をこなしてシュートフォームを固めるのが先だな。木暮と同じ練習方法で確率を上げるのはその後だ。」
少し見渡せば多くの連中が自主練で汗を流している。
その一角で高砂の奴が赤木や魚住になんとか食らい付こうとしてるな。
そんな高砂に兼田さんからの檄が飛んでるぜ。
一つ息を吐くともう一度クロスオーバーをやってみる。
…ダメだな。ストレートと同じフォームでと意識し過ぎて、クロスオーバーのキレが全く無い。
これは一朝一夕には出来そうにないぜ。
だがこいつを完璧…とまではいかずとも、ある程度形に出来ないと三井は抜けん。そんな確信がある。
俺は宮益にシュートフォームのアドバイスをしている三井に目を向ける。
「ふっ、挑みがいのある男だ。」
◆
side:高砂一馬(たかさご かずま)
自主練でゴール下の練習をしているが、同い年の赤木と魚住が止められない。
逆に俺の攻めは通じずに止められてしまう。
「よし、次はリバウンド争いだ。先ずは赤木と魚住からな。」
兼田さんが指揮する形で自主練が続いていくが、正直に言って何とか食らい付いていくのがやっとだ。
そう思いながら息を整えていると兼田さんにバシッと背中を叩かれた。
「顔を上げろ高砂。見るのも練習だぞ。」
「はい!」
兼田さんがミドルレンジからジャンプシュートを撃つと、赤木と魚住の攻防が始まる。
1回目のリバウンド争いは赤木が制した。
「魚住!一歩目が遅い!」
「はい!」
「よし!次だ!」
2回、3回と続くと兼田さんが魚住と交代する。
そして兼田さんはまるで手本を示す様に赤木とのリバウンド争いを制してみせた。
「Cはチームの大黒柱だ。どんな形でチームを支えるかは選手それぞれだが、基本が出来てなきゃ話にならん。それはわかるな?」
「「「はい!」」」
「よし!だったら練習だ!地味でキツイ練習だが一番必要な練習だからな。気を抜くんじゃないぞ!」
ベンチ入りすら出来ていない俺が兼田さん達と練習出来ているのは物凄い幸運だ。
この幸運を少しでも物にするために俺は、歯を食い縛ってついていくのだった。
◆
side:宮益義範(みやます よしのり)
僕には牧みたいな身体能力も無ければ高砂みたいな身長も無い…そしてハッキリ言って海南バスケ部の中で僕が一番下手だ。
そんな僕がユニフォームを着るにはこのままじゃダメだと思った。何か一つ武器が必要だと。
そこで考えたのがロングシュートだ。
インターハイ予選で見た湘北の試合、同い年の木暮のバスケを見て衝撃だった。ああいうバスケもあるんだと思った。
言っちゃ悪いけど木暮も僕と同じで決して身体能力が高いわけじゃない。でも木暮はちゃんと湘北の戦力になっていた。
僕は合宿の自主練の時間になると直ぐに木暮の所に行って質問した。どうすれば僕も3Pシュートが入る様になるのかって。
すると木暮は…。
「俺は三井に教えてもらったからなぁ。良かったら三井を紹介するけど…どうだ?」
僕みたいな下手な奴が三井みたいなエースに教えてもらっていいのかと思った。
でも木暮は…。
「ダメもとで頼んでみようぜ。折角の合宿なんだからさ。切磋琢磨しないともったいないだろ?」
そんな木暮の言葉で僕は三井を紹介してもらった。そして今に至る。
「宮益、膝がサボってるぜ。」
「お、おう!」
三井の指摘通りにフォームを修正していくとシュートが少しずつ入る様になってきた。
そのおかげでシュート練習が凄く楽しい。
「よし、前後にずれるのはいいが左右はダメだ。それとフォームを意識してしばらくやっててくれ。」
そう言うと三井は牧と1on1を始める。
見惚れそうになった僕は顔を叩いて気を入れ直す。
「今は無理だけどいつかは…。」
僕は宮益義範、海南で一番バスケが下手な男だ。
でもいつかは憧れの海南のユニフォームを着たい。
そんな夢を胸に僕はシュート練習を続けるのだった。
次の投稿は9:00の予定です。