side:高頭力
幾多の激戦を勝ち抜き、我ら海南大付属高校はインターハイの決勝戦まで駒を進める事が出来た。
今私は宿泊先の旅館で決勝戦の相手である、高校バスケの王者の山王工業の研究をしている。
山王のスタメンは3年生2人に2年生1人、そして1年生が2人なのだが、特に注目すべきは1年生2人…PGの深津とGの河田だ。
深津は自身のプレーでチームメイトを鼓舞する牧とはタイプが違うが、1年生にして既にコート上でリーダーシップを発揮しているいいPGだ。
こうしてビデオを繰り返し見て研究をしても、1年生らしい荒々しさなどなく冷静沈着そのもの。可愛げのない相手だ。
だというのにここぞという場面ではきっちりと仕事をするいやらしい選手でもある。1年後、2年後には山王の歴代の中でもトップクラスのPGになるかもしれない。
そして河田だが…非常に表現が難しい選手だ。
牧の様に身体能力が突出しているわけでもなく、三井の様な天才肌の選手でもない。
強いていうなら相手を良く観察して対応する器用な選手…といったところか。
だがその観察力が並外れているのだろう。でなければ1年生にして王者山王のユニフォームを着ることは出来まい。
こういうタイプの選手はなによりも経験が重要になる。おそらく堂本監督も気付いているのだろう。河田をスタメンとして出場させているのがその証拠だ。
ビデオを止めると要点を書き出したノートを見ながら頭を掻く。
「やれやれ、こいつは厳しい戦いになるな。」
贔屓目に見ても勝率は2割あれば上出来といったところか。
「山王がフルコートプレスを仕掛けてきた時に耐えられたらあるいは…。」
そのためには前半、牧に力を抑えさせる必要があるな。
下手をしたら前半で勝負が決まってしまいかねないが、ここは博打のしどころだな。ふふ…滾ってきたぞ。
◆
side:河田雅史
「ぶえっくし!」
「風邪か?」
「いや、鼻がムズムズしただけだ。」
「体調には気を付けるべし。」
深津との会話もそこそこにビデオに目を向ける。
「次はPGの牧だ。海南の攻撃の8割はこの牧のカットインから始まる。」
堂本監督の言葉を受けて俺は牧の映像を良く観察する。
「速いな。」
「あぁ、しかも空中でぶつかっても崩れない。厄介な奴だ。」
キャプテンの小野さんと一つ上の鮎川さんの会話が耳に届くが、俺は気にせず観察を続ける。
しばらく映像を見ていくと、湘北とかいう聞いたことがない所との試合の映像が流れ始めた。
「牧が抑えられてる?誰だ相手は?」
小野さんの言葉を受けて堂本監督が資料を片手に話し出す。
「湘北高校の三井寿だ。」
「湘北?知らないですね。」
「去年まで弱小と呼ばれていた高校だからな。知らなくても不思議じゃない。」
弱小校に何故このレベルの男が?うちでもユニフォームを着れるぞ。
「三井が気になるかもしれないが注目すべきは明日戦う海南の牧だ。この試合の牧は三井にほぼ完璧に抑えられている。参考に出来るところがあるだろう。」
顎に手を当て首を傾げながらも観察を続ける。
…ストレートとクロスでちと違うな。
対して三井って奴のドリブルは違いがわかんね。
まぁ、監督の言う通りに明日は海南だ。湘北の三井ってのを気にしても仕方ねぇか。
その後、ミーティングが終わると俺は深津と駄弁りながら布団に入る。
さて、明日も試合に出れっかな?そのためにもしっかりと寝て体調を整えねぇと。
◆深津一成(ふかつ かずなり):原作キャラの一人。原作では山王の主将にして正PG。
現段階ではまだ1年のため原作程の強かさは無いが、1年生にして王者山王のユニフォームを勝ち取っている。
◆河田雅史(かわた まさし):原作キャラの一人。原作では全国ナンバーワンセンターと呼び称されたキャラ。
現段階では原作開始時ほど背が伸びていないのでまだGをしているが、それでも既に山王のユニフォームを勝ち取る才を見せている。
作者は彼を牧や三井の様に相手が誰でも自分のバスケを貫くのではなく、相手を良く観察して対応していくバスケ巧者として考えている。
◆堂本五郎(どうもと ごろう):原作キャラの一人。山王の監督。
山王をインターハイ三連覇に導いた名将らしい。
拙作の湘北が全国に出場した時には高頭と同じく解説枠になるかも。
◆小野(おの):拙作オリジナルキャラ。山王の三年で主将でC。
全国で3本指に入るCと呼ばれる高校バスケ界の有名人。
筋トレが趣味で原作の赤木や魚住と同様のパワータイプの選手だが、小技もこなす器用な選手である。
◆鮎川(あゆかわ):拙作オリジナルキャラ。山王の二年でPGとGをこなすコンボガード。
堂本の意向でPGからGにコンバートしたが、まだ経験不足の深津の調子次第ではPGを務めることもある便利屋な選手。
山王の時期キャプテン候補。
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