side:三井寿
山王のフルコートプレスディフェンスにも負けず牧が躍動したが、今年のインターハイ全国大会を制したのは山王だった。
後半残り1秒で海南は山王に同点まで追い付いたが、海南の奮闘はそこまでだった。
幾ら牧が凄い選手でもまだ1年生だ。延長戦まで戦いきる体力は無く、延長戦の前半途中で牧がベンチに下がると、そこからは一方的な展開になってしまった。
「あの後半の牧の最後のアタックで河田がファールしてれば、海南が勝ったかもしれないな。」
倉石のその言葉に皆が頷くが、あれはファールを回避した河田を誉めるべきプレーだ。
牧は自分に残った体力とチーム力の差を考え、リスクを負ってまで河田をわざと追い付かせたんだ。
だが河田はその牧の目論見に気付き寸前でファールを回避。その結果としてインターハイ全国大会は山王が制した。
記録には残らないがあれはこの試合最高の河田のファインプレーだ。
「山王の河田か…。」
こいつは間違いなくそう遠くない内にチームの中心選手になるな。
「まったく…挑み甲斐のある奴等だぜ。」
次は俺達があの舞台に立つ。そんな思いを胸に俺達の夏は過ぎていったのだった。
◆
side:三井寿
インターハイ全国大会が終わると、俺は国体の神奈川選抜選手に選ばれた。
湘北から選ばれたのは俺以外には赤木がいるが、残りは他から選ばれているらしい。
「三井君、怪我をしない様にしっかりと自己管理を。そして全国の強者と戦えるチャンスを楽しんできてください。」
「はいっ!」
安西先生の激励でモチベーションが最高潮に達した俺は、神奈川選抜チームの連携確認の為に海南大付属高校に足を運んでいた。
「2週間後には国体が始まる。我々神奈川選抜チームの目標は、王者山王のメンバーが率いる秋田選抜チームに勝ち優勝することだ。各々、しっかりと連携を確認してくれ
。」
即席チームだが俺と牧そして兼田さんに他の選ばれた海南のメンバーは夏の合同合宿で何度も組んだから連携に問題はなかった。
後は他のメンバー…主に翔陽のメンバーと連携の確認をするだけだな。
俺達は兼田さんが中心になって他のメンバーに声を掛けていき、少しずつ連携を高めていく。
「今日の練習はこれで終わりだ。来週にもう1度集まって連携の最終確認をする。皆、怪我に気を付けて過ごしてくれ。解散!」
高頭監督の言葉で解散すると、俺は帰る前に牧や兼田さんと話をしていく。
「三井、山王との試合の後半のラストワンプレー…どう思った。」
「わざと河田に追い付かせたあれか?」
「あぁ。」
牧の問い掛けに俺は考えながら言葉を返す。
「あの時点ではあれ以外に山王に勝つ方法はなかっただろうな。結果として3点プレーにはなんなかったが、あれはあの場面で気付いた河田を誉めるべきだ。」
「そうか…。お前ならどうした?」
その問い掛けに俺はまた考えながら言葉を返す。
「そうだな…状況次第だろうが3Pシュートを狙うだろうな。バスケットカウントを誘うプレーも悪くないが、相手ありきのプレーで確実性が低いからな。」
「俺にしてみれば3Pシュートの方がよほど確実性が低いんだがな。」
そんな感じで話を続けていると高頭監督が声を掛けてきた。
「三井、赤木、本当にいいのか?家まで送っていくぞ?」
「いえ、いいです。ゆっくり考え事をしながら帰りたいんで。」
「そうか、事故に気を付けて帰れよ。」
「はい!今日はありがとうございました!行こうぜ、赤木」
「おう。」
高頭監督に頭を下げた後、牧と兼田さんにも声を掛けてから俺は赤木と一緒に歩き出す。
「俺の選抜チームでのポジションはSGか…。さて、どう動くかな?」
「お前なら問題無くこなせると思うがな。」
選抜チームのメンバーとの連携を想定しながら、試合での動きをシミュレーションしていくと、気が付いたら家の前まで帰りついていたのだった。
次の投稿は11:00の予定です。