「リハビリ含めて全治1ヵ月か…。」
入部初日の紅白戦で漫画の俺と同様に左膝を怪我した俺は、安西先生が運転する車に乗せられて病院に運ばれた。
そのまま入院して翌日、病院のベッドの上で目を覚ました俺は、回診に来た医者からギプスが巻かれている左膝の状態を聞いたのがつい先程だ。
「春の県大会は無理だな。夏のインターハイは…間に合うか?」
入部初日に怪我をしてろくに練習に参加出来ない俺だ。スタメンどころかベンチに入れるかどうかもわからねぇ。
(漫画の俺が焦るのもわかるぜ…。)
そう考える俺自身は今は落ち着いている。
前世の記憶のおかげだ。
バスケマニアだった前世の俺はNBA選手の色んな話を知っていた。
前世の俺の記憶を辿るとカ〇ーも度重なる足首と膝の怪我に悩んでいたらしい。
そんなカ〇ーは大抵のスポーツでは怪我などのアクシデントは起こるもの。大切なのはそういった困難と向き合い、乗り越えるためにポジティブでいることと言ったそうだ。
(ポジティブか…あぁ、そうだよな。安西先生だって言ってたじゃねぇか。諦めたらそこで試合終了だって。こんなことで諦めてたまるかよ。俺は諦めない男、三井寿だ。)
反省も後悔もするが、こういう時こそポジティブに。それでこそ俺らしいじゃねぇか。
(先ずはしっかりと膝を治す。じゃねぇと漫画の俺みてぇにまた怪我をして、安西先生に恩返しをするどころじゃなくなっちまうぜ。…リハビリの先生辺りに聞けば、何かいい怪我の予防になりそうなトレーニングメニューを教えてもらえねぇか?よし、リハビリが始まったら聞いてみるか。それとユーロステップはしばらく封印だな。怪我をしたのはあれをやろうとした時だ。リハビリの先生に何かいいトレーニングメニューを教えてもらって、しっかりと身体を作ったら解禁だ。)
この怪我をバネに肉体改造をと考えているとなんか楽しくなってきたぜ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき時刻は夕方、木暮と赤木が俺の見舞いにやって来た。
「三井、これ今週の週刊バスケットボールだ。読むだろ?」
「おっ?サンキュー、木暮。」
木暮から雑誌を受け取りながら礼を言う。
「どうだ膝は?」
「医者が言うにはリハビリを含めて全治1ヵ月だとさ。」
「そうか…春の県大会には間に合わんな。」
赤木の問いに答えを返すと、残念そうに赤木が言葉を溢す。
「おいおい、俺の心配をしている暇はねぇだろ赤木。お前、もう少しフリースローを決められる様にならねぇと、ファウルで簡単に潰されるぞ。」
「むっ?わかっている。」
紅白戦の時に赤木は何度かファウルをもらってフリースローをしたんだが、ものの見事に全部外していた。
「仕方ねぇなぁ。1週間後には退院だから、退院したら俺がフリースローの練習を見てやるよ。」
「それはありがたいが…リハビリとかは大丈夫なのか?」
「本格的なリハビリは2週間後からだからな。それに、授業が終わって直ぐに病院に行ってリハビリをすれば、バスケ部の練習が終わるまでには十分に間に合うだろうぜ。どうせ居残って練習するつもりなんだろ?」
「あぁ、そうだ。」
不敵に笑った俺と赤木は拳を合わせる。
「容赦せずビシバシ行くぞ。泣き言は聞かねぇからな。」
「ふっ、望むところだ。」
「おいおい二人とも、俺をのけものにしないでくれよ。俺だって上手くなりたいんだからさ。」
肩を竦めてそう言う木暮を見て、俺と赤木は笑ってしまったのだった。
◆
side:木暮公延
「三井、元気そうでよかったな。」
「あぁ、そうだな。」
三井を見舞いにいった帰り道、表情に出さない様にしているけど赤木も嬉しそうだ。
「春の県大会か…どこまで行けるかな?」
「もちろん目指すのは優勝だ。」
「わかってるよ。はぁ…三井がいればお前へのチェックが軽くなるんだろうけどな。」
中学時代から赤木は試合では相手チームから厳しいチェックを受け続けてきて、思うようにプレイ出来ないことが多かった。
でも三井の3Pシュートがあれば中の赤木はぐっと楽になると思う。
それに俺は三井と赤木のコンビを見てみたい。出来ればコートの中で。
「それよりも1週間後だ。安西先生に居残り練習を出来る様に頼まないといかん。」
「あぁ、そうだな。」
昨日の紅白戦中、俺は誰かが上手くなっていく瞬間というのを目撃した。
その誰かは赤木だ。
赤木は三井の動きから学んで、実践して、どんどん動きが良くなっていってた。
素直に羨ましかった。
でも、上手くなったのは赤木だけじゃない。
三井のゲームメイキングに合わせようと動いていくと、俺もポジショニングが上手くなっていった実感があった。
まぁ、ボールを貰ってもシュートを何度も外してしまったから、もっともっと練習しないとな。
「俺も三井に教えてもらうかな。もう少しシュートを決められる様にならないと、ベンチにも入れないだろうし。」
俺がそう言うと赤木は少し驚いたようにこっちを見てくる。
「お前も随分と貪欲になったな。」
「誰かさんのおかげでバスケに本気になったからね。そうなったら、やっぱ試合に出たいと思うようになったよ。」
俺の言葉に赤木が不敵に笑う。
「ふっ、SG(シューティングガード)だと三井とポジションが被るが、どうするつもりだ?」
「三井はどこでも出来るんだから、別に三井をSGって考える必要はないだろ?」
「そうだな、あいつのバスケセンスならどこでもやれるだろう。だが、C(センター)は譲らんぞ。」
三井が相手でも変わらない負けず嫌いを見せる赤木に、俺はプッと笑ってしまった。
さっきは出来ればコートの中でなんて思ったけど訂正する。必ずコートの中で赤木と三井のコンビを見る。
そうすればきっと、もっとバスケが楽しくなるはずだから。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。
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