本日投稿1話目です。
side:藤真健司
赤木に抱えられる様にしてコートの外に出た俺の耳に、高頭監督の声が聞こえてくる。
「牧、直ぐにアップだ。」
「はい!」
待ってくれ……俺はまだやれる!
「監督!」
「藤真、先ずはドクターに診てもらってからだ。」
会場で待機していた医者が俺の所に小走りでやってくると、俺の左目を診ていく。
「……うん、脳震盪も起こしてないし大丈夫そうだ。でも腫れてきてるから氷嚢を当てて、安静にしているようにね。それと念の為、病院に行ってしっかりと検査を受けるように。」
そう言って医者は去っていくのを見送ると、俺は立ち上がって高頭監督の所に行く。
「監督、やれます。」
「ダメだ。」
「医者は大丈夫だって言いました。試合が終わったら直ぐに病院に行って検査も受けます。だから……お願いします!」
頭を深々と下げると高頭監督のため息が聞こえる。
「はぁ……後半からだ。」
「後半……ですか?」
「頻繁に選手を交代させるとリズムが崩れる。今は安静にして少しでも回復しておけ。」
「……っ!ありがとうございます!」
俺はもう一度深々と頭を下げるとベンチに座る。
そして開いている片方の目で試合の流れを観察していくのだった。
◆
side:南烈(みなみ つよし)
ベンチに下がった俺は頭を抱える。
……やってもうた。
当てるつもりはあらへんかった。ぴったり貼り付いてくるもんやから、ちょっとビビらせて下がらせるつもりやってん。
せやのにあいつは下がらへんかった。……いや、ちゃうな。絶対に俺からボール奪うて気迫で、逆に俺がビビっとったんや。
「烈、顔を上げろ。」
北野監督の言葉で俺は顔を上げる。
「後半からもう一度行くぞ。それまでに整理をつけとけ。」
「……あかん、あかんよ、おっちゃん。俺、今日はもう無理や。」
「……向こうのベンチを見ろ。」
おっちゃんに言われて相手さんのベンチに目を向けたら俺が肘を当ててしもうた奴……藤真が向こうの監督さんに頭を下げとった。
「試合が終わったら俺も一緒に頭を下げに行ってやる。だから逃げるな。逃げたらあの馬鹿げた行為を自分の中で正当化しちまうぞ。そりゃカッコ悪いだろ?」
あぁ……たしかにそらカッコ悪いわ。
「わかったらそのしみったれた顔を拭け。加害者のお前が被害者面してどうすんだ。」
「おっちゃんひどいわぁ~。繊細な俺の心が傷ついたで。」
「アホ、試合中は監督って呼べ。」
ぐしゃぐしゃとおっちゃん……北野監督に髪をかき混ぜられると、さっきまでの罪悪感で潰れそうだった気持ちが少し楽になっとったわ。
俺は藤真に目を向ける。
ふとこっちを見てきた藤真と目が合った。
俺は直ぐに立ち上がって頭を下げると、藤真は苦笑いをしながら手を振ってくる。
「……ほんまにすまんかったわ。試合が終わったらもう一度頭を下げるさかい。今はこれで勘弁したってや。」
その後、神奈川選抜チームにリードされた状態で前半が終わった。
そしてハーフタイムが終わると、俺と藤真は再びコートに戻るのだった。
次の投稿は9:00の予定です。