side:藤真健司
後半が始まるとボールを持った南がゆっくり俺の所にやって来る。
そして……。
「っ!?」
ポンッと軽く放る様にして俺にボールをパスしてきた。
左目が殆ど塞がっていて距離感が掴めなかったので少しお手玉してしまったが、俺がボールを持ったのを見た南は腰を落としてディフェンスの構えを取った。
そんな南を見た俺は……。
「っ!?」
南にボールを返してニッと笑ってみせた。
すると俺達はどちらともなくとある形へと至る……そう、前半で起こった因縁のあの形へ。
「肘はもう勘弁してくれよ?あれは痛いからな。」
「ほんますまんかったわ。後で改めて謝らせてもらうで。試合に勝った後でな。」
「それは残念だな。謝ってもらえないぜ。」
笑みを交わし終えると、南がクッと首を振ってフェイントを入れてくると同時に仕掛けてくる。
その仕掛けには反応出来たがそれもフェイクだった。
一歩踏み出して止まった南は直ぐに下がると、フリーで3Pシュートを放って見事に決めてみせた。
「外もあるのかよ……。」
「無いとは言ってへんで?」
「……このやろう。」
俺と南は笑顔になっていた。まるでバスケを始めたての頃に1on1をした時の様に。
赤木が俺にボールをパスしてくる。
……片目が殆ど塞がってるから取りにくいな。でも泣き言は言ってられない。
「……大丈夫なんか?」
どうやら南に気付かれたみたいだな。
「正直に言ってきついけど、手加減はするなよ。怒るからな?」
「怖いわ~。怖いから全力でやらして貰うわ。」
腰を落として構えた南に俺も半身になって応える。
……左目がズキズキと痛み始めたけど、こんな面白い時間を誰かに譲れるかよ!
◆
side:南烈
藤真か……凄い奴やで。片目が殆ど塞がっとるのに、そのハンデを感じさせへん程にパスが冴えわたっとる。
正直に言ってこのパスは今の俺じゃ止められへんわ。
ほんま……なんであんなことしてもうたんやろ……。俺ってほんまアホやわ……。
アカン、今はそんなことを考えてる場合やない。藤真に失礼やんか。
チームメイトからのパスを受け取った俺は藤真と対峙する。
藤真は3Pシュートを警戒したのか少し間合いが近い。……せやったらこうや!
今度はカットインで仕掛ける。中に切り込んだ俺に相手チームのCが立ちはだかる。
……デカイ奴やな。なに食ったらそんなにデカくなんねん?
切り込んだ勢いのままに跳んでレイアップにいくと相手チームのCが反応してきた。
俺は咄嗟にダブルクラッチに切り替えてゴールを狙う。
手を離れたボールはリングで数回バウンドすると、リングの中に沈んだ。
(危なっ!?よう入ったわほんま。さっきの3Pシュートもそうやけど、もしかして調子ええんか俺?)
少し自問自答をしてみたんやけど、気持ちを切り替える為に顔を張る。
(そんなんどうでもええやんか。今は思いっきりバスケをすればええんや。)
こんなに勝ち負けを気にせんとバスケに夢中になれたんはいつ以来やろ?
そのせいなんか試合時間はあっという間に過ぎていってもうたわ。
試合の結果は前半でついた差を詰めきれずにうちの負け。
点差を詰めきれへんかったんは後半残り10分で三井っちゅうのが出てきたからやな。
なんやあれ?どう止めたらええねん?えげつないとしか言えへん程に凄かったわ。
あまりに凄くてうちのチームメイト達が……。
『なんでもっと早く出さへんねん!』
『真打ちやからって遅すぎやろ!』
『たった10分しか楽しめへんかったやんか!』
なんて文句を試合が終わった後に言うとったわ。
まぁあれや、残念やけど……負けて逆にスッキリした気分やわ。
(そんじゃ謝りに……まさかと思うけど藤真の奴……試合中のあれを真に受けてへんよな?)
そう思いながら謝りにいったんやけど、真に受けてへんかった代わりにそれをネタにされて散々イジラレてもうたわ。
せやけどそのおかげで心に残っとった最後のモヤモヤがキレイサッパリ消えてくれたで。
藤真……ほんまに感謝するで。お前のおかげで俺はまたバスケに夢中になれたわ。
まぁ……それはそれとしてや……次は俺が勝ったるからな!勝ち逃げは許さへんで!
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