本日投稿1話目です。
side:牧紳一
深津が一皮剥けた。個人的には歓迎するが、チームとしては面倒と言わざるをえない。
一皮剥けた深津は派手な動きは無いが、堅実で強かな動きでチームの勝利に貢献してくる。
PGの深津が崩れないだけでこれ程に厄介だとはな……。同じPGとして見習う部分が多いぜ。
まぁ、それはそれとしてだ……先ずはこのフルコートプレスディフェンスをどうにかしないとな。
秋田選抜は前半残り半分のところでフルコートプレスディフェンスを仕掛けてきた。
それの意図するところは……間違いなく三井を引っ張り出すためだろうな。
悪いが俺にも意地がある。そう簡単には三井を引っ張り出させねぇよ。ここからは全開だ!
俺はコートを全力で駆け回った。
それでもジリジリと点差が離れていっちまう。
悔しいが今の俺じゃ食らい付くので精一杯だ。
それでも前半はなんとか三井の温存に成功した。点差は15点……十分に射程圏内だぜ。
ハーフタイムに入ると俺はドカッとベンチに腰を下ろす。
そして手を差し出してきた三井と熱くタッチを交わしたのだった。
◆
side:三井寿
国体全国大会の決勝戦後半が始まった。
前半に奮闘してくれたメンバーに応えるためにも、最初から全開で行くぜ!
牧からのパスを受け取った俺はフェイクを一つ入れると、一歩下がってディープスリーを撃つ。
挨拶代わりの一発が見事に決まると、俺のマッチアップ相手の河田が笑うのが見えた。
攻守が変わって秋田選抜の攻撃。深津を起点に秋田選抜が迫ってくる。……2点を取られたが、時間はまだまだ残ってる。慌てる必要はない。
牧からパスを受け取ると河田が張り付く様にしてチェックを掛けてくる。
目でフェイクを一つ入れてからストレートに抜く。そのまま内を通って逆サイドに抜けると3Pシュートを撃つ。……これで2連続。点差は11点。
続く秋田選抜の攻撃が失敗に終わると牧が速攻を決めて点差が9点になる。すると秋田選抜はタイムアウトを取った。
ここまでは順調。高頭監督のプラン通りに進んでいるが……。
俺はスポーツドリンクを一口飲むと、秋田選抜チームのベンチに目を向けたのだった。
◆
side:河田雅史
「三井にダブルチームを付ける。」
堂本監督の言葉に納得と同時に少しばかりの悔しさを感じる。
けどまぁ仕方ねぇ。俺一人じゃ三井を止めるのは厳しいからな。
俺はタイムアウトの終わり際にダブルチームで組むことになった山王の先輩……井橋さんに声を掛ける。
「井橋さん、ちょっといいすか?」
「どうした河田?」
「三井へのチェックなんすけど……。」
そう言って耳打ちすると井橋さんがため息を吐く。
「まぁ、フリーで3Pを撃たれるよりはマシか。けどドリブルで仕掛けられたらどうする?」
「俺がファールしてでも止めます。」
「わかった。けどファールで止めるのは交代でやるぞ。チームファール数が嵩むけど仕方ねぇべ。それと、あいつをケガさせる様な荒いのは無しだからな。」
「ウス、了解っす。」
たった一人の選手に振り回される。それもスポーツの一面だが、それを防ぐ方法があるのもチームスポーツの一面だ。
「チームの勝利。チームスポーツにおいてこれ以上に嬉しいことはねぇ。だからよ三井。俺個人じゃ勝てなくても、チームでは勝たせてもらうべ。」
次の投稿は9:00の予定です。