side:三井寿
タイムアウトが終わって秋田選抜のボールからスタートすると、手堅くゴールを決められて11点差になった。
そして牧からボールを受け取ると俺にダブルチームがついた。
来るかもしれねぇって予想はしていたが、王者山王を有する秋田選抜が俺にしてくるってのはこう……俺の力が認められた様で感動みたいなものが込み上げてくるな。
それはそれとして……さてどうするか?
このダブルチーム……通常のそれとは少し違う。一人は俺の3Pシュートを警戒しているのか少し距離を詰め気味だが、もう一人……河田はドリブルを警戒する様に少し距離を開けているんだ。
といっても両者の絶妙な間隔がしっかりとダブルチームを機能させている。
まぁとりあえず……試してみるか!
少し距離を詰め気味な男をクロスオーバーで抜き去る。
(よし、このまま……っ!?)
中を通りつつ展開しようとした次の瞬間、河田がファールをしてきて試合が止まった。
「なるほど、そういうことか。」
こいつらは徹底して俺に仕事をさせない気だ。それこそファールで止めてでも。
それ程に脅威だと思われるのは光栄だが、勝つためにはこの状況をなんとかしなくちゃならねぇ。
(これが前半ならわざとファールをさせ続けて、ファールトラブルを誘うのもありなんだがな……。)
だが今は後半……どうする?
(……とりあえずやってみるか。)
試合が再開されると俺は牧にボールを要求する。
秋田選抜の思惑に気付いたのか牧は僅かに逡巡したが、不敵に笑うと俺にパスを出してくる。
「さて、うちの司令塔の期待に応えねぇとな。」
ボールを持つと河田ともう一人が先程と立ち位置を入れ替えてマークについてきた。
俺はフェイクを一つ入れてもう一度クロスオーバーで抜く。ただし今度は中に向かわず3Pラインをなぞる様にして横にだ。
河田は3Pシュートを警戒していたのか完全に置き去りにしたが、もう一人が一歩遅れる形で俺に追随してくるのを横目で確認した。
そこで俺はシュートフェイクを一つ入れてから3Pシュートを撃つ。
するとバスケットカウントを貰って4点プレイを成立させた。
(これで少しは縮こまってくれたら楽なんだが……そう上手くはいかねぇよな。)
河田ともう一人が冷静に言葉を交わしているのが目に映る。
「けどこれで8点差だ。射程圏に捉えたぜ秋田選抜。」
◆
side:河田雅史
「やられたな。」
「すんません。」
「いや、誘われたのは俺だからな。お前の責任じゃないさ。」
井橋さんに頭を下げると気にするなと肩に手を置かれる。
「どうします?」
「監督が動かないってことは俺達のやることは変わらんさ。けど、次からはバスケットカウントに気をつけて止めないとな。」
井橋さんに連れて俺も三井に目を向ける。
俺達の狙いに直ぐ気付くだけじゃなく、直ぐにそれを利用してくる。世の中にはとんでもねぇセンスを持った選手もいるもんだな。
試合が再開するとボールを運びながら深津が指を一本立てた。
「一つ一つ確実に。先ずはこの一本、しっかりと取るべし。」
あぁ、その通りだ。一つ一つ確実に。それが俺達のバスケだ。
チラリと三井に目を向ける。
「個人じゃ『今は』勝てそうにねぇけど、試合まで負けるつもりはねぇぞ。」
後半も残すところ半分ちょっとだ。
さぁ、終わったらぶっ倒れる気で走るとするかね。
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