side:牧紳一
三井の4点プレーで秋田選抜との点差が8点差となると、ジワリジワリと秋田選抜との点差を詰めていった。
これは両チームに3Pシューターがいるかいないかの差……といったら酷か。そもそも三井の様な3Pシューターは日本全国を見渡してもそうそういないからな。
さて、あと一歩で秋田選抜に追い付くが、状況はむしろ俺達にとって悪くなりつつある。
その理由は三井の息が上がってきたからだ。
元々スタミナに不安があった三井だが、ダブルチームに対処する為にはいつも以上に走らなくてはならない。
なるほど、三井にダブルチームをつけて中が空くリスクを負うだけのメリットはあったわけだ。
だがこれでやるべきことがハッキリした。
延長戦に入ったら負ける。後半で勝負をつける。わかりやすくていい。
後半残り5分のところで高頭監督がタイムアウトを取った。
少しでも三井のスタミナを回復させるためだ。
完全に息が上がってしまった三井だが、その目に光る闘志には衰えが見えない。
これを見て奮起しないならスポーツマンじゃねぇ。
タイムアウトが終わると俺達は走った。
走って、走って、走り抜いた。
試合は進み残り40秒。2点差で負けている。
俺は中学時代の県大会決勝を思い出した。
三井に回せばなんとかしてくれる。
その思いでラストアタックを掛けた。
フェイクを入れて深津を抜き去る。中に切れ込むが意識は外に。そしてノールックでパスを出す。
「お前ならそこにいるだろう?三井。」
綺麗な放物線を描いたボールが宙を舞っていく。
そしてスウィッシュで決まると、俺達のスコアボードに3点が追加された。
会場が爆発したかの様な歓声に包まれる。
「まだだ!試合はまだ終わってないぞ!」
兼田さんの声掛けで急いでディフェンスに戻る。
残り20秒。もう走る余力の無い三井を抜きに守らなければならない。集中しろ、牧紳一!
深津が走り込んでくる。
自分でも信じられないぐらいの集中力でディフェンスをする。
残り10秒。
ドリブルで仕掛けてきた深津がシュートモーションに入った。ブロックするべく跳ぶ。
残り8秒。
深津はシュートモーション中……ジャンプをしている最中にパスを出した。ボールは河田に回る。
残り7秒。
ジャンプシュートに行った河田の眼前に誰かの手が伸びる……その誰かの手は三井だった。
もう走れるスタミナが無いにもかかわらず、懸命にここまで戻っていたのだ。
河田の手からボールが離れる。
残り5秒。
リングに弾かれたボールが落ちる。リバウンド争いだ。
「兼田さん!」
「ウォォォオオオオオッ!」
雄叫びと共に跳び上がった兼田さんの手にボールが収まる。
そして着地した兼田さんがガッチリとボールを確保する。そして残り時間が過ぎると試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「兼田さん!」
「ナイスリバウンドだ兼田!」
ベンチの皆も含めて喜びを爆発させる中、俺は一人床に座り込んだ三井の所に歩いていく。
「ナイスプレー、三井。」
言葉を返す余力もないのか三井は僅かに口角を上げただけだった。
「さぁ、整列だ。行こうぜ。」
「お……おう……。」
ふらつきながら立とうとする三井に肩を貸すと、俺達は試合終了の礼をするためにゆっくりと歩き出したのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。