三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第47話『勝利への執念』

side:牧紳一

 

 

三井の4点プレーで秋田選抜との点差が8点差となると、ジワリジワリと秋田選抜との点差を詰めていった。

 

これは両チームに3Pシューターがいるかいないかの差……といったら酷か。そもそも三井の様な3Pシューターは日本全国を見渡してもそうそういないからな。

 

さて、あと一歩で秋田選抜に追い付くが、状況はむしろ俺達にとって悪くなりつつある。

 

その理由は三井の息が上がってきたからだ。

 

元々スタミナに不安があった三井だが、ダブルチームに対処する為にはいつも以上に走らなくてはならない。

 

なるほど、三井にダブルチームをつけて中が空くリスクを負うだけのメリットはあったわけだ。

 

だがこれでやるべきことがハッキリした。

 

延長戦に入ったら負ける。後半で勝負をつける。わかりやすくていい。

 

後半残り5分のところで高頭監督がタイムアウトを取った。

 

少しでも三井のスタミナを回復させるためだ。

 

完全に息が上がってしまった三井だが、その目に光る闘志には衰えが見えない。

 

これを見て奮起しないならスポーツマンじゃねぇ。

 

タイムアウトが終わると俺達は走った。

 

走って、走って、走り抜いた。

 

試合は進み残り40秒。2点差で負けている。

 

俺は中学時代の県大会決勝を思い出した。

 

三井に回せばなんとかしてくれる。

 

その思いでラストアタックを掛けた。

 

フェイクを入れて深津を抜き去る。中に切れ込むが意識は外に。そしてノールックでパスを出す。

 

「お前ならそこにいるだろう?三井。」

 

綺麗な放物線を描いたボールが宙を舞っていく。

 

そしてスウィッシュで決まると、俺達のスコアボードに3点が追加された。

 

会場が爆発したかの様な歓声に包まれる。

 

「まだだ!試合はまだ終わってないぞ!」

 

兼田さんの声掛けで急いでディフェンスに戻る。

 

残り20秒。もう走る余力の無い三井を抜きに守らなければならない。集中しろ、牧紳一!

 

深津が走り込んでくる。

 

自分でも信じられないぐらいの集中力でディフェンスをする。

 

残り10秒。

 

ドリブルで仕掛けてきた深津がシュートモーションに入った。ブロックするべく跳ぶ。

 

残り8秒。

 

深津はシュートモーション中……ジャンプをしている最中にパスを出した。ボールは河田に回る。

 

残り7秒。

 

ジャンプシュートに行った河田の眼前に誰かの手が伸びる……その誰かの手は三井だった。

 

もう走れるスタミナが無いにもかかわらず、懸命にここまで戻っていたのだ。

 

河田の手からボールが離れる。

 

残り5秒。

 

リングに弾かれたボールが落ちる。リバウンド争いだ。

 

「兼田さん!」

「ウォォォオオオオオッ!」

 

雄叫びと共に跳び上がった兼田さんの手にボールが収まる。

 

そして着地した兼田さんがガッチリとボールを確保する。そして残り時間が過ぎると試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

「兼田さん!」

「ナイスリバウンドだ兼田!」

 

ベンチの皆も含めて喜びを爆発させる中、俺は一人床に座り込んだ三井の所に歩いていく。

 

「ナイスプレー、三井。」

 

言葉を返す余力もないのか三井は僅かに口角を上げただけだった。

 

「さぁ、整列だ。行こうぜ。」

「お……おう……。」

 

ふらつきながら立とうとする三井に肩を貸すと、俺達は試合終了の礼をするためにゆっくりと歩き出したのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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