本日投稿1話目です。
side:赤木剛憲
秋田選抜との決勝戦に勝利して全国制覇を成し遂げた俺達だが、直ぐに表彰式が始まらない事に首を傾げていた。
すると……。
「おそらく牧と三井のどちらをMVPにするかで揉めているんだろう。」
と高頭監督が言った。
納得が言った俺達は暇潰しを兼ねてどちらがMVPになるか話し合ったのだが、当の本人達は……。
「牧がMVPだろ。」
「三井がMVPだな。」
二人は顔を見合うと……。
「俺は決勝で後半しか出場してねぇ。牧はフルで出場してるじゃねぇか。それにあの最後のノールックパス、あれを考えりゃお前がMVPだ。」
「後半しか出場してねぇって言ったが、その後半だけで何本3Pシュートを決めた?しかもダブルチームだってものともしなかった。どう考えてもお前がMVPだ。」
そう言い合ってお互いに譲らなかった。
そんな光景に俺達は大いに笑った。
結局どっちがMVPになったかなんだが……選ばれたのは三井だった。
高頭監督曰く……「より強く印象に残ったのが三井なんだろう。三井程の3Pシューターは大学生はおろか社会人にだっていない。選ばれたのは妥当と言えるな。」だそうだ。
MVPに選ばれて不満そうな顔をするのは三井ぐらいかもしれんな。それだけ向上心等のバスケに対する意識が高いからなんだろうが……。
他の表彰の結果は以下の通りだ。
敢闘賞に藤真が選ばれ、アシスト王が深津、得点王は三井がなっている。
そしてベスト5はPGに牧、Gに秋田選抜の河田、SGに三井、SFに大阪選抜の南、Cに兼田さんが選ばれた。
表彰式が終わると週刊バスケットボールの記者だという相田弥生さんが、俺達神奈川選抜メンバーの所に取材に来た。
新人の女性記者らしく、今回が初めての取材だそうだ。
相田さんは一人一人に声を掛けて取材をしてくれている。
バスケの事に詳しく会話のテンポがいいため、皆取材を受けるのに苦労はしていない様子だ。
そんな中で俺の番がやって来た。
「赤木君、優勝が決まった時に少し悔しそうな顔をしとったけど、理由を聞いてもええかな?あっ、これに関してはオフレコにするわ。」
良く見ているものだと感心した俺は、オフレコであるという事もあって包み隠さずに相田さんに話す。
「優勝が決まったあの瞬間、コートの中にいなかったのが悔しかったんです。」
「なるほど、せやけど赤木君はまだ1年生やん。仕方ないと思わへん?」
相田さんの言葉に俺は首を横に振る。
「同じ1年の三井と牧はコートにいました。そうである以上、1年だから仕方ないというのは言い訳にしかなりません。」
「うん、いい向上心やね。記事に出来へんのがもったいないわぁ。」
相田さんの言葉に俺は苦笑いをする。
「そんじゃ話は変わるんやけど、誰か目標にしてる選手はおる?」
「兼田さんです。」
俺は兼田さんに顔を向けながら話を続ける。
「三井が牧からノールックパスを貰って3Pシュートを決めた瞬間、俺は勝利を確信して油断しました。ですが兼田さんはそうじゃなかった。そして最後のリバウンド争いを制したあの光景を見て、兼田さんが監督も含めたチームの皆に信頼される理由がわかりました。」
俺は一つ息を入れると笑みを浮かべながら話を続ける。
「完敗です。ですがそれは今はです。ウインターカップまでにもっと練習を重ねて、俺は兼田さんを超えます。」
「……うん、ウインターカップでは期待させて貰うわ。記者としても、バスケファンとしても。」
取材が終わって相田さんと握手を交わした俺は胸を張って歩き出す。
敗けを認める。でも勝つことを諦めない。一歩一歩前へ。悔しさを胸に歩いていく。
そして昨日より今日、今日より明日、努力を重ねて勝利を目指していこう。
不器用な俺でもそれぐらいは出来るからな。
次の投稿は9:00の予定です。