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side:赤木剛憲
家に帰り飯を食っていると晴子と美和の話が響く。
「いや~晴子ちゃんったら、少し会わない間にますます可愛くなっちゃってぇ。学校でモテモテでしょ?」
「え?そんなことないよ。勉強と部活で精一杯だし…。」
「たしか富ヶ丘中の流川君だっけ?」
「わー!美和お従姉ちゃん!しー!しー!」
飯を食い終わると騒がしい二人に思わずため息を吐く。
「それで美和、今日は何の用で来た?」
「何か用がないと来ちゃダメなの?それは従妹に対して冷たいんじゃないかなぁ?まぁ、用があるから来たんだけどさ。」
にしし、と笑う美和に頭を抱えたくなる。
「剛憲、男バスってマネージャー募集してる?」
「安西先生に聞かなければわからんが…美和、お前、女子バスケ部には入らんのか?」
「う~ん…去年、神奈川ベスト5にはなれたし、選手はもういいかなって。」
視線を足下に落とした美和を目にして察する。
「足首、そんなにひどいのか?」
「もうクセになっちゃってるんだよねぇ、捻挫がさ。晴子ちゃんも気をつけなきゃダメよ。」
ストップ&ダッシュに加えてジャンプをする機会が多いバスケは、膝や足首の怪我をしやすい競技だ。
そしてそれらの怪我を何度もしてしまい、美和の様に特定部位の怪我が癖になってしまう選手も少なくないと聞いている。
「お前がそう決めたのならとやかくは言わんが、マネージャーなら女子バスケ部でもいいだろう?」
「見てるとやりたくなるじゃん。けどバスケから離れるのもって考えてさ。」
「それで男子バスケ部のマネージャーか…。」
なるほど、納得した。明日にでも安西先生にマネージャーの件を聞いてみるか。
「それに…。」
「なんだ?」
「いるんでしょ?武石中の三井君。」
美和の問いに首を傾げる。
「たしかに三井はいるが…?」
そう言うと美和はにししと笑う。
「いや~去年の県大会決勝のブザービーターを見たらこう…ビビッと来ちゃったんだよね。だから是非ともお近付きになりたいなぁなんて。」
「わっ、美和お従姉ちゃん大胆。」
「ふふふ、晴子ちゃん、女は度胸だよ。」
キャーキャーとうるさい二人に頭を抱える。
やれやれ、三井も面倒なのに目をつけられたもんだ。
「というわけだから剛憲、私を三井君に紹介してよ。代わりに今度女の子の友達を紹介してあげるからさ。」
「いらんわ!全国制覇を達成するのに遊んでいる暇なんぞ無い!」
「まったく…適度に息抜きしないと疲労がドカって貯まってガツンって怪我しちゃうよ。経験者は語る!…なんてね。」
おどける美和の姿に小さくため息を吐く。
「はぁ…紹介するのは構わんが、三井がお前に興味を持つとは限らんぞ。」
「大丈夫!このバスケで鍛えたナイスバディで!…ちょ~っと足に筋肉が付き過ぎかも?晴子ちゃん、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、美和お従姉ちゃんは可愛いから。」
晴子の言葉を聞いた美和が晴子に抱き付く。
「もう!嬉しいこと言ってくれちゃってぇ!私が流川君だったら晴子ちゃんを放っておかないのに!…おんやぁ?晴子ちゃん、前に会った時よりも大きくなってない?これは直接触って確かめなくては!」
「きゃっ!?もう、美和お従姉ちゃん止めてよぉ。」
「にしし、いいじゃない減るもんでもないし。」
ソファーを挟んで晴子と美和の攻防が始まった。
美和が手をワキワキさせながら晴子を追いかけ、晴子はキャーキャー騒ぎながら美和から逃げる。
そんな二人のやり取りは母さんに止められるまで続いた。
「はぁ…。」
この愚従妹を三井に紹介せねばならんのかと考えると、申し訳なさから大きなため息が出てしまう。
「木暮も巻き込むか。あいつも美和とは知らん仲ではないしな。さて、とりあえず美和を送って…。」
「あっ、私しばらく泊まっていくから。だから帰りの心配はしなくていいからねぇ。」
美和の言葉を耳にした俺は、また大きなため息を吐いたのだった。
◆
「赤木の従妹?」
赤木にベビーフックを教えた翌日の昼休み、赤木が木暮と一緒に女子生徒を教室に連れて来た。
「そっ、赤木美和って言うんだ。よろしくね、三井君。」
「…似てねぇな。」
「いや~よく言われる。あっ、赤木だと愚従兄と被るから美和って呼んでね。」
「誰が愚従兄だ馬鹿たれが。」
木暮に目を向けると苦笑いをしながら状況を説明してくれる。
「実は美和さんが男子バスケ部のマネージャーになりたいって言ってさ。それで先ずは同じ1年に紹介しておこうって話になってね。」
「なるほどな。」
「さぁそれじゃ親睦を深める為にお話を楽しも~!ねぇねぇ三井君、好きなNBAの選手は?」
好きなNBAの選手か…カ○ーどころかレ○・アレンもまだいねぇし…そうなると…。
「そうだな…レ○ー・ミラーってとこか。」
「おぉ~、レ○ー・ミラーって新人なのによく知ってるね。やっぱ同じシューターは注目してる感じ?」
「…まぁな。」
美和との話は中々に弾んだ。
話の流れで知ったんだが美和自身もバスケをやっていたらしく、だからなのか話が合う。
(赤木、もしかして美和さんって?)
(…木暮の想像通りだ。)
(それはまた、わかりやすいというかなんというか。)
(巻き込んですまん。)
(気にしないでいいさ。それにしても、三井は気付いてないみたいだね。モテそうなのに意外だな。)
(それだけバスケに集中して来たんだろう。見習わなければならん。)
(はは、赤木らしいね。)
うん?木暮と赤木は何をコソコソ話してるんだ?
「どうした、木暮、赤木?」
「いや、なんでもないよ。二人共NBAに詳しいなぁって思ってさ。」
「あぁ、正直な話ついていけん。」
「そうか?」
まぁ、前世の俺が生きていた時代と比べると、今は情報を得る手段が限られてるからな。
俺自身も前世の記憶がなきゃ、NBAの選手をほとんど知らなかったぜ。
うん?美和は何で詳しいんだ?
「なぁ、美和は何でNBAに詳しいんだ?」
「お父さんがすっごいNBAマニアでさ。わざわざアメリカにいる友達に頼んでバスケ関係の雑誌を取り寄せてるんだぁ。」
「おぉ、すげぇな。」
「おかげで私までNBAに詳しくなっちゃったよ。まぁ、そのおかげでこうしてお話を楽しめてるんだけどね。」
そんな美和の言葉がキッカケになった様に、昼休み終了の予鈴が鳴り響く。
「おっと行かなきゃ。それじゃ三井君、またね。」
手を振りながら教室を出ていく美和に軽く手を振り返す。
(赤木、美和さん本気だよね?)
(だろうな。あいつは変わったところがある奴だが、遊びで誰かを好きになる様な奴じゃない。)
(うん、そうだね。ところで赤木、三井と美和さんの仲がどうなるか賭けないか?とりあえず期限は夏の大会までってことで。)
(あれでも従妹なんだがな…。友人関係から変わらんにスポーツドリンクを一本。)
(おっ?それじゃ俺は…)
予鈴が鳴ったのに木暮と赤木は何してんだ?
「おい、そろそろ行かなくていいのか?」
「おっと、急ごう赤木。」
「あぁ、三井、また後でな。」
早歩きで教室を去っていく二人を見送ると俺は昼休みの事を振り返る。
美和としたNBAの話は楽しかったぜ。NBAマニアだった前世の俺の影響を受けてんのか?
NBAか…憧れねぇっつったら嘘になる。
前世の俺のおかげで英語も問題ねぇし…本気で考えてみるか?
俺は授業を受けながらもアメリカに行くかどうかを本気で考え続けるのだった。
今回は二人の人物を紹介。
◆レ〇・アレン:ウォルター・レ〇・アレン・ジュニア。第6話で登場。
NBA史上でも傑出したピュアシューターの一人です。
傑出した3Pシュート能力に目がいきがちですが、ガードとしての総合能力も非常に高い素晴らしい選手だったとのこと。
またリーグ屈指のクラッチシューターだったらしく、作者的には三井寿に似てるなぁ…なんて思ったりしてます。
◆レ〇ー・ミラー:第6話で登場。
上述の彼と同じくNBAでも傑出したピュアシューターの一人。
ですが上述の彼の様に優れた身体能力などはなかった模様。
ドラフトで指名されて在籍したインディアナ・ベ〇サーズ一筋で現役を終えたのは日本人好みかも…?