side:三井寿
海南と翔陽が1勝1敗で迎えた決勝リーグの最終戦、2勝で最終戦を迎えた湘北を含めた3チームが全国に行くために勝利を求める形となった。
陵南にもまだ全国に行ける可能性は残っているが、ハッキリ言って厳しいと言わざるを得ない。
さて、俺達湘北の決勝リーグ最終戦の相手は神奈川王者の海南だ。
先ず海南が全国に行くためには勝利が必要というだけでなく、翔陽が陵南に勝利した時の事を考えて可能な限り得失点差をプラスにしなければならない。つまりうちを相手にリスクを背負ってでも攻勢に出続けなければならないんだ。
逆にうちはリスクを背負ってくる海南を相手に堅実に勝利を目指せばいい状況だが、安西先生はそれをよしとしなかった。
「まずは真っ向勝負といきましょう。そして勝ち、全国へ」
全国……この響きが俺達を奮い立たせる。
「行くぞっ!」
「「「おぉっ!」」」
長瀬さんの号令に応えコートに入るのだった。
◆
side:三井寿
試合開始のジャンプボールを制したのは兼田さんだった。
3年生にとっては引退が掛かった崖っぷちの試合。どうやら今日の兼田さんは気合いの乗りが違うみたいだ。
そんな事を考えながら牧のマークにつく。
「ふっ!」
鋭く息を吐いた牧が仕掛けてくる。
危うく置いていかれそうになる程のキレのある動きに驚くが、それでもそう簡単には抜かせないぜ。
一度足を止めた牧がチェンジオブペースを使ってもう一度抜きにくるが、それにも対応する。
だが牧は目敏くコースを見つけ出すと、中にいる兼田さんにパスを通した。
すると……
「オォッ!」
兼田さんにしては珍しく、強引にダンクを決めてきた。
ブロックに跳んでいた赤木がコートに尻もちをつきながら驚いている。
更に驚くことに今のプレーでバスケットカウントを取られた。
兼田さんが落ち着いてフリースローを決めた後、俺は赤木に声を掛ける。
「赤木、わかってるか?」
「……あぁ、兼田さんらしくない強引さだ」
赤木の言葉に俺は頷く。
「勝利のためにガムシャラになってる。気をつけろよ。以前までの兼田さんじゃねぇぞ」
「あぁ」
離れながら考えていく。
おそらく兼田さんは狙ってバスケットカウントを貰いにいった。
この理由は海南に外が無いからだろうな。
俺や木暮、そして長谷さんの3Pシュートへの対抗策として、赤木を潰しつつ更にバスケットカウントで得点も狙っていく。
赤木も兼田さんとゴール下で渡り合える様になってきたが、ああいう駆け引きの経験はまだまだ浅い。
そんな赤木がファールトラブルに見舞われたら?一応控えに猪狩さんがいるが、湘北のゴール下はガタガタになるだろう。
だからといって赤木にファールに気を付ける様に言ってあいつのプレーが消極的になれば、ゴール下は兼田さんの独壇場になっちまう。
高頭監督の指示かどうかはわからないが、嫌なところを攻めてくるもんだぜ。
俺は海南のメンバーに目を向ける。
王者としての貫禄なんざくそ食らえ、そんなことよりも勝利をって感じの目をしてやがる。
「上等だ。お前らを倒して、全国に行かせてもらうぜ」
俺は長瀬さんからボールを貰うと、集中を高めて牧と対峙するのだった。
◆
side:三井寿
前半が終わってスコアは五分なんだが、状況はあまり良くねぇな。赤木が既に3つファールをしちまっているのが痛い。
バスケは5ファールで退場だ。つまり赤木は後1つファールをしたらリーチだ。
そしてそうなったらベンチに下がって勝負所まで温存ってのがお決まりだな。
けど海南相手にそうなったらジワジワと点差が広がっていって、勝負所が来る前に試合が決まっちまう可能性が高い。うちと海南のチーム力の差はスタメンはともかく、ベンチも合わせたらまだまだあるからな。
そのことは赤木も理解してるんだろうが、赤木の今の実力じゃファールをしないように気をつけて積極性を失えば兼田さんには勝てない。
だからこれも必然なんだろう。
後半開始早々に赤木がまたファールを取られた。これで4ファール。流石に安西先生もベンチを立ち上がってタイムアウトを取った。
兼田さんがバスケットカウントも決めて点差は5点。スコア的にはまだまだ戦える状況だが、チームの雰囲気は良くねぇ。
「少しフォーメーションを変更します」
「赤木君と猪狩君を交代します。そして木暮君と上島君も交代です。猪狩君、倉石君と協力して兼田君を抑えてください。長瀬君、上島君と二人で周囲のフォローを」
そう言って安西先生が戦術ボードに示したのは、翔陽が海南にやった戦術に酷似したものだった。
なるほど、Cの猪狩さんに加えてディフェンスの上手い倉石の二人で兼田さんに対応し、瞬発力のある長瀬さんと運動量のある上島さんがフォローに回るのか。
オフェンス力は下がるが、チームを立て直すにはこれが最善だな。
「そして三井君、牧君の事は頼みましたよ?」
「はいっ!」
これはディフェンスの事だけじゃなくオフェンスの事も含めた指示……そう受け止めるべきだな。
タイムアウトが終わってコートに戻ると、海南メンバー全員が俺を見てくる。
「はっ、燃えてくるじゃねぇか」
湘北はまだ戦える。勝てる。その事をこれから証明してやるぜ!
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。