リハビリを終えて体育館に行くと美和がいた。
経験者だけあってボール出しや声出しも様になってるな。
安西先生に報告をして今日も見学をしていくと、しばらくしてゲーム形式の練習が始まった。
(おっ?赤木の奴、早速ベビーフックを試してるな。)
先輩達よりも頭一つ近くでかい赤木がベビーフックをやると、もう先輩達には手がつけられなくなってきている感じだ。
(後は実戦でも出来るかどうかだな。…おぉ、木暮が3Pシュートを決めやがった。良いシュートセレクションだったぜ、木暮。)
赤木も木暮も昨日の今日では成長も些細なもんだろう。
けど、ふとしたキッカケで一気に選手能力が開花する事もある。
その兆しが赤木と木暮にあるのかもしれねぇな。
(ふぅ…二人の練習を手伝うって言ったのは俺自身だが、こう成長を見せつけられるとくるものがあるぜ。)
逸る心を鎮める様に大きく息を吐く。
(先ずは怪我をしっかり治す。そこは間違うなよ、三井寿!)
◆
通常の練習が終わって居残り練習が始まったんだが、何故か美和まで残っていた。
「美和、帰んなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫、剛憲に送らせるから。」
「三井、美和はこういう奴だ。だからあまり気にするな。」
「ちょっと剛憲、そんなこと言ってると女の子にモテないぞ。」
「余計なお世話だ。」
まぁ、美和自身がいいならいいんだろうな。
なので美和にボール出し等のヘルプをしてもらい、赤木達の練習を見ていく。
「赤木、力み過ぎだ。腕じゃなくて膝で調整しろ。」
「おう。」
昨日の今日だが赤木のフリースロー成功率が良くなっている。
本当に選手能力が開花してきてるのかもな。
「木暮、各ポジションの3Pの成功率はどうだ?」
「やっぱり左45度が一番高いな。」
ロングシュートは繊細なもので、ちょっとした変化で成功率がガラッと変わる。
だが理想はどこからでも変わらない成功率で撃てるようになることだ。
「そうか。それじゃ昨日と同じように左45度からの3Pシュートの感覚を意識して、他のポジションでも撃ってくれ。」
「あぁ、わかった。」
そこで俺は木暮に左右0度と左右45度、そして正面からの5つのポジションから3Pシュートを20本ずつ撃たせ、その中で成功率の高いポジションでの3Pシュートの感覚を意識させてから、もう1セット3Pシュートの練習をさせるようにしている。
このやり方はただ数をこなすよりも、多少なりとも目標となるもんがあった方がマシだろって程度のもんだ。
だがこのやり方は思ったよりも木暮に合ってたみたいだ。
各ポジションからの3Pシュートの成否を記録したノートを見る木暮は、すげぇ楽しそうだぜ。
まぁ、これは木暮に基礎が出来ていたからこそだ。
もし木暮に基礎が出来てなかった時は…数をとにかくこなさせてシュートフォームを固めたり、シュートの感覚を身に付けさせていたかもしれねぇな。
それからしばらく赤木や木暮の練習を見ていると…。
「はぁ…早くバスケがしたいぜ。」
思わずそう溢してしまい、自分を戒める様に頬を張ったのだった。
◆
side:赤木美和
居残り練習が終わって三井君を送ると、途中で木暮君とも別れて剛憲と帰りながら話をする。
「う~ん、やっぱり三井君のご両親に挨拶すべきだったかな?」
「やめんか馬鹿たれが。」
「そうよねぇ、先ずは私が三井君を名前で呼べる様になるのが先だよねぇ。」
「お前を三井に紹介したのを心底後悔し始めたぞ。」
肩を落としてげんなりする剛憲は失礼だよね。
「ところで剛憲、ベビーフックなんていつ覚えたのよ?」
「昨日だ。三井に教わった。」
「おぉ、流石は三井君だね。しかもベビーフックを選択するなんてセンス抜群じゃない。あれなら不器用な剛憲でも習得出来そうだもんね。」
「一言余計だが、三井のバスケセンスが抜群なのは確かだな。」
ベビーフックかぁ…レイ○ーズのアー○ィン・ジョンソン・ジュニアが使ってるフックシュートね。
ベビーフックは普通のフックシュートに比べて、シュートフォームがコンパクトでボールをコントロールしやすいから、本当に剛憲に合ってると思うわ。
うんうん、流石は私の三井君。いいセンスしてるじゃん。
「これは三井君が復活したら、本当にいいところまでいけそうね。」
「いけそうなんじゃない、いくんだ。全国の頂上までな。」
「おぉ~強気だねぇ。でも、それぐらいじゃなきゃ、勝てる試合も勝てなくなるもんね。うんうん、いいよいいよ。その調子で先ずは春の県大会を制覇だ!」
お~って拳を振り上げても剛憲はノリが悪く反応してこない。
一人でやってると恥ずかしいんですけど?せめてツッコミは入れてよ。無視が一番辛いんだってば。
それにしてもやっぱり三井君はいいなぁ。
私はお父さんの影響で小さい頃からNBAが大好きだった。
でも、私の周りにいた人達とはあまりどころか、ほとんどNBAの話が出来なかった。
女子はもちろんだけど、男子ともNBAの話が出来なかったのは…正直に言って寂しかったな。
でも今日、私は本当の意味で理想の男性と会えた。
バスケが上手くて、勉強も出来て、カッコ良くて、しかもNBAの話が幾らでも出来ちゃう同い年の男の子。
このチャンス…逃してたまるかぁ!
「剛憲!全国制覇を本気で応援してあげるから、私と三井君の事も本気で応援してよ!」
「はぁ~…。」
ちょっと、なんでそんな大きなため息を吐くのよ?
従妹の恋なんだからちゃんと応援しなさいよね!
私は三井君と恋人になるって決めたんだから!
「ぜったい!ぜ~ったいに!三井君と恋人になるんだからぁ!」
「近所迷惑だ馬鹿たれが。」
◆アー○ィン・ジョンソン・ジュニア:第7話に登場。日本ではマ〇ック・ジョンソンの呼び名で有名(?)
NBA史上最高のPG(ポイントガード)と称賛される程に優れた選手。
ノールックパスが非常に有名らしいが作者はよく知らない。
彼はそれまでのPGは低身長の選手が務めるものという常識を覆した2mオーバーの高身長の選手で、彼に憧れてPGをしたいという高身長の選手が多い模様。
しかしチーム事情などで2mオーバーの高身長の選手は別のポジションを任されることが多いらしい。
そんな彼が常識を覆えすPGに成れたのは、同チームにNBA歴代得点記録1位になるほどの傑出したC(センター)がいたという幸運に恵まれたのもあるかもしれないですね。
◆赤木美和(あかぎ みわ):拙作のオリジナルヒロイン。
赤木剛憲の同い年の従妹であり、赤木晴子の従姉。中学時代に県大会ベスト5に選ばれる程のバスケットウーマン。
第1話の三井のブザービーターを見て三井に一目惚れすると、従兄の赤木剛憲を通じて三井と接触したら更に惚れてしまった模様。
第7話にて三井の恋人になると決意表明したが果たして…。
容姿は晴子をもう少しボーイッシュにして、髪型を外ハネのショートボブにした感じをイメージしてください。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。