side:三井寿
クリスマスのあの日から美和と付き合い始めたが、俺の日常に特に大きな変化は無いな。精々帰りの時に美和が腕を組んできたり、まぁ……キスの1つもしたりって程度だ。
さて俺のプライベートはともかく、翔陽の壮行会兼練習試合の日がやって来たんだが、その日に陵南の田岡監督がサプライズゲストを連れてきた。
そのゲストとは……。
「どーも、仙道彰です。今日はよろしくお願いしますよ、先輩方」
田岡監督が東京の中学から直接スカウトしてきた男、仙道彰だ。
「仙道は年が明けたらうちに来ることが決まっていてな。今日は1つ揉んでやってほしい」
田岡監督はそう言うが、仙道は揉まれる奴の目をしていない。むしろ挑戦的な目をしているぜ。
しかし仙道には既知感があるな。たぶん前世の俺が知ってるんだろうが、そんなもんはどうでもいい。プレーを見りゃわかることだからな。
練習試合前のアップで仙道の動きをそれとなく見ていく。
「出来る奴だな。それもかなり」
「あぁ」
牧の言葉に頷く。
「田岡監督の秘蔵っ子ってとこか?」
「陵南のエース候補なのは間違いないだろうな」
陵南に欠けていたものが埋まるかどうかはまだわからないが、面白くなりそうなのは確かだ。
◆
side:仙道彰
田岡監督の誘いで今日の練習試合に参加させてもらったが、本当に来てよかった。
「いや、レベル高いわ」
一通りの練習試合に出してもらったが、俺のオフェンスはそれなりに通じた。あくまでそれなりにだけどな。
「一番の問題はディフェンスだな」
ディフェンスの練習は然程面白くなかったからそれとなく手を抜いてきていた。そのしっぺ返しが今来ている。
田岡監督に年明けから陵南の練習に参加していいって言ってもらってるが、こりゃ本気で参加を考えなきゃダメだな。
「三井さんにも牧さんにも一回も勝てなかったなぁ……」
ディフェンスはまだしもあの二人にはオフェンスも通じなかった。
「……はは、面白い」
あの時やりあった北沢以上に俺のバスケが通用しない。ん?北沢?沢北?どっちでもいいか。
「仙道、しっかりとクールダウンをしろ。こういった基本をキッチリこなせないようじゃ、到底あの二人には追い付けないぞ」
そう言う田岡監督の視線の先には、キッチリとクールダウンをしている三井さんと牧さんの姿があった。
「監督、年明けからの練習参加の件、お願いします」
「……わかった。みっちりしごいてやるから覚悟しておけ」
「望むところですよ」
こんなに練習がしたいと思ったのはいつ振りだ?もしかしたらバスケを始めたての頃以来かもしれない。
首に掛けていたタオルで汗を拭う。
「……必ず追い付く、いや、追い越してみせますよ。三井さん、牧さん」
本気で挑める相手を見付けた俺は、心の底からワクワクしたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。