side:河田雅史
ウインターカップを全国優勝したと思ったらまたコンバートか。GにFにCと忙しないわな。
けど悪くねぇべ。これで結果を残しゃ大学からスカウトが来るってもんだ。
そんで大学から社会人、果てにはオリンピック代表ってな。
アメリカ行きもちと考えたが無理だわな。俺の力量云々の前に、米と味噌汁が無ぇ場所で生きてける気がせんわ。英語も読み書きはともかく、喋るのと聞くのはからっきしだかんな。
そういやアメリカといえば、堂本監督がスカウトしてきて新しく入った沢北の奴が行くって言ってたな。
……無理だな。今のあいつじゃ通用せん。
オフェンスは悪くねぇ。けどあくまで日本の高校レベルではって感じだ。
堂本監督が言うには来年のエース候補として使って鍛えていくって事だがはてさて、どうなるかねぇ?
……沢北の運次第だな。
インターハイか選抜で神奈川のあの二人……三井か牧のどっちかとやれたら、あいつの尻に火がつくだろ。そうなったら面白くなるかもな。
「河田、練習が始まるから行くべし」
おっと、沢北のことばっか考えてたらいかんわな。先ずは俺のことだわな。コンバートしてスタメン落ちとか洒落にならん。
俺は急いで着替えると深津と一緒に練習に向かうのだった。
◆
side:田岡茂一
新年度が始まり新一年生達の入部も落ち着いた頃、俺は新たな教え子達の育成の方向性を考えていた。
育成方針とはいっても練習メニューではない。ざっと2つにわけて『叱って伸ばす』か『誉めて伸ばす』かだ。
「仙道は叱って伸ばすでいいだろう。三井や牧とプレーした事で、あいつの向上心に火がついたからな」
俺は仙道の事をもっとプライドが高い奴だと思っていたが違った。マイペースではあるが勝利に貪欲で、何よりも上手い奴と勝負することに飢えている。
「さて、残るは福田か……」
あいつは現時点では一番下手だ。だがあいつの母校の監督に聞いたところ、福田は2年の終わり頃にバスケ部に入部したらしい。
僅か一年の経験と考えると悪くない。いや、むしろいい選手だ。ディフェンスが下手くそ過ぎるところを除けばな。
「しっかり鍛えればスコアラーとして仙道の負担を軽く出来るだろう」
その将来のビジョンは見えている。問題は叱って伸ばすか誉めて伸ばすかだが……。
「……誉めて伸ばすか」
叱って伸ばすことも考えたが、経験の浅い福田はまだまだバスケへの理解が浅い。ということは知らない、出来ない事が当たり前だと考えるべきだ。
「よし、方向性は決まった」
メモの走り書きを終えた俺は立ち上がる。
「さぁ、行くとするか。上手く行けば今年のウインターカップで……いや、逸るな茂一。勝負の年は来年だ。今年はじっくりと選手達に経験を積ませながら鍛えあげるんだ」
教え子達への期待から逸る己を宥めながら、俺はこれからの教え子達の成長に胸を膨らませるのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。