三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日も1話の投稿です。


第68話『沸き立つ後悔と先の楽しみ』

side:三井寿

 

 

春の県大会まで残り1週間となった頃、多かった新入部員の半数が辞めて1年は15人程になっていた。

 

その15人も居残り練習に参加しているのは約半分の8人。残りの7人は大学進学の為に塾に行ったりしているので参加は難しいそうだ。

 

さて居残り練習に参加している1年達なんだが、なかなかに楽しみな連中だ。

 

宮城、安田、潮崎、角田に俺の中学時代の後輩の東、八木、串田、内村と、1年全員が先輩に遠慮せず貪欲に技術を吸収しようとしている。

 

「角田!一歩目が遅い!それじゃ力で負けてる相手には勝てないぞ!」

「はい!」

 

「安田!自分で仕掛ける意思も見せろ!パスを供給することだけがPGの仕事じゃない!慎重と臆病を履き違えるな!」

「はい!」

 

「潮崎!狙える時は積極的にゴールを狙え!積極的なミスはOKだからな!」

「はい!」

 

今日の居残り練習の見直しも兼ねて1年だけで3on3をやらせているんだが、体力や技術以上にこいつらには意識が足りない。

 

「漠然とやってるだけじゃ向上には限界がある!しっかりと目的を意識しろ!」

「「「はい!」」」

 

1年達の中で特に目立っているのは宮城と東だが、この二人にも甘いところが幾つもある。

 

「宮城!もっとミドルシュートを撃て!入らなくてもあると思わせるだけで相手の反応は遅れる!」

「はい!」

 

「東!シチュエーションセレクトをもっとしっかり!そんなんじゃ何本撃ったって3Pシュートは入らねぇぞ!」

「はい!」

 

俺以外からもコーチングの声が飛び交う。ミスを詰る野次はない。本気でチームを強くしようとする気持ちと、ライバルの足を引っ張るのではなく高め合おうとする真摯な心がこの熱い雰囲気を作り出しているんだ。

 

……戦えるチームに、全国制覇を本気で狙えるチームになってきた。その認識が俺の身体を武者震いで震わせる。

 

あぁ……大会が待ち遠しいぜ。

 

 

 

 

side:安西光義

 

 

戦えるチームが出来てきた。負けたら監督である私の責任だと心から思えるチームが。

 

かつて大学で監督をしていた頃は、私の顔色を伺いながら練習や試合をする選手が多かった。

 

あの頃の私は子供達は自己管理が出来ないと決め付け、上から抑え込む様な指導をしていた……今も後悔が残る過ちだ。

 

あぁ……向上心を持ち自主的に練習をする子供達の成長の早さたるや、なんと素晴らしいことか。

 

私がやるべき事は間違った努力を正すこと。そして練習のし過ぎで怪我をしないように見守ることだ。この歳になってそれを漸く心から理解する事が出来た。

 

「あの時に気付いていれば、お前ももっと上手くなれていたのだろうか……」

 

前を向き歩いていても後悔は尽きず。だがそれ以上に楽しみを得られるのも人生。

 

「今年はお前に良い報告を出来るかもしれないな、谷沢」

 

切磋琢磨する子供達の姿に私は微笑むのだった。




これで本日の投稿は終わりです。


☆オリキャラ紹介☆


・八木(やぎ):三井の中学時代の後輩。ポジションはPF。


・串田(くしだ):三井の中学時代の後輩。ポジションはC。


・内村(うちむら):三井の中学時代の後輩。ポジションはG。


また来週お会いしましょう。
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