三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日も1話の投稿です。


第73話『宮城の決意』

side:宮城リョータ

 

 

春の県大会、湘北は決勝戦まで勝ち進んだ。ヤス以外の一年は試合に出れてないが、見るだけでも勉強になる試合ばかりだぜ。

 

さて、今俺達はもう1つの準決勝の翔陽と海南の試合を見学している。

 

その中でも俺は同じポジションの牧と藤真に注目して見ていた。

 

「行った!」

「速い!」

 

シオとヤスの声を耳にしながら牧のドリブルを見ていく。

 

(本当に速ぇな……トップスピードは負けてるつもりはねぇが、加速では多分負けてる……)

 

あの一歩目の速さは多分三井さんが言ってた抜きが関わってる。俺も物にしなきゃな。

 

牧はそのまま中に切り込むと自分でそのまま決めた。バスケットカウントのオマケまで付けて。

 

(あの当たりの強さは真似出来ねぇな……さて、次は藤真の番か)

 

藤真がどう仕掛けるか見ていると、藤真は不意にヒョイっと簡単に3Pシュートを撃った。

 

「入ったな。クイックリリースが上手くなってる」

 

藤真が3Pシュートを撃った瞬間、三井さんがそう言った。そして三井さんの言葉通りに藤真のシュートが決まる。

 

「サウスポーなのもあって、ありゃ止めにくいな」

「しかもインサイドの3年生2人と2年生の1人は190cm近くとデカイ選手ばかり。流石に翔陽は人材が豊富よねぇ」

 

三井さんと美和さんの会話を耳にしながら、俺は藤真が突如3Pシュートを撃った意図を考えていた。

 

(インサイドの有利を活かす?それとも牧の警戒が薄かった?)

 

考えてもわからなかった俺は一度思考を打ち切って試合を見ることに集中する。

 

(バスケ選手としてはチビの俺にとってドリブルは生命線、生きる道……必然的に自分から仕掛けていく牧のスタイルに近くなる。けど、俺には牧程のタッパが無いからあの当たりの強さは真似出来ねぇ……)

 

ヤスは湘北の中でもう居場所を確立したと言っても過言じゃねぇ。じゃあ、俺が湘北で居場所を作るにはどうしたらいい?

 

(もっとやれると思ってた。高校でも俺のバスケは通用すると思ってた……甘かったぜ……)

 

牧と比べたら俺は少しすばしっこいだけのチビで、藤真と比べたらジャンプシュートの入らない男……。

 

改めて現状を認識してみると、悔しさで身体が震える。

 

その震える身体を隠す様に俯いていると、パシッと何かで頭を叩かれた。

 

「リョータ、な~に一人で勝手にへこんでるのよ?」

「……彩ちゃん?」

 

彩ちゃんは俺の肩に手を置きながらコートを指差す。

 

「あの人達は2年であんたは1年……向こうの方が上手くても当たり前でしょう?」

「え?あっ、いや、そうかもしれないけど……」

「これから上手くなればいいのよ。神奈川ナンバーワンPGって呼ばれるぐらいにね」

 

神奈川ナンバーワンPG……その言葉を聞いた俺はなんか笑ってしまった。

 

「よっしゃ!やってやるぜ!」

「そう、それでいいのよ」

「ところで彩ちゃん、こ、今度俺とデート……」

 

ペシッと丸めたパンフレットで頭を軽く叩かれる。

 

「そういうことは、せめてベスト5に選ばれてから言いなさい」

「ベスト5に選ばれたらいいんだね!?うぉぉおおお!俺はやるぜ!見ててね、彩ちゃん」

 

悩んでへこむ暇があるなら練習して上手くなる。当たり前のことなのに忘れてた。

 

ありがとう彩ちゃん。おかげで目が覚めたぜ。

 

牧、藤真、首を洗って待ってやがれ。俺は必ず神奈川ナンバーワンPGになってやる……彩ちゃんとのデートのために!




これで本日の投稿は終わりです。

宮城はこんなキャラでいいのだろうか…?

また来週お会いしましょう。

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