三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日は3話投稿します。

本日投稿1話目です。


第8話『春季関東大会開幕』

美和が男子バスケ部のマネージャーになってから数日経つと、漸くギプスが外れる日がやって来た。

 

病院でギプスを外してもらって自分の足を見た瞬間は、なんとも言えない感覚だったな。

 

そしてその日から本格的なリハビリが始まった。

 

リハビリにはバスケとはまた違ったキツさがある。

 

ただ俺としては肉体的なキツさよりも精神的なキツさの方が大きく感じたな。

 

早くバスケがしたいって気持ちを抑えるのが本当に大変だぜ。

 

そして本格的なリハビリが始まって更に日にちが経つと、春の県大会…春季関東大会の県予選が始まろうとしていた。

 

予想通りに間に合わなかったのは本当に残念だが、左膝の状態は日に日に良くなっているのが自分でもわかる。

 

これなら十分に夏のインターハイには間に合う。まぁ、初日に怪我をして練習に参加していない俺だ。だからベンチにも入れるかどうかわからないが…。

 

それはともかく春の県大会だ。

 

この大会で赤木がスタメンを、そして木暮がベンチ入りを勝ち取っていた。

 

赤木はともかく木暮は大抜擢…とも言えねぇか。練習では木暮の方が先輩達より3Pシュートを決めているからな。

 

実は木暮の方が先輩達より3Pシュートを決められるのには訳がある。

 

俺が知る未来のバスケでは3Pシュートの重要性はしっかりと認知されてるんだが、現在はそれほど3Pシュートは重要視されていないんだ。

 

だから先輩達もジャンプシュートの練習は、ペイントエリア付近でのものを中心にやっている。

 

NBAの一流シューターでもシーズンの3Pシュートの成功率が30%台って事を考えれば、先輩達がより確率の高いミドルレンジのシュートを重要視するのも理解出来るんだが、俺としちゃ少し寂しいものがあるな。

 

さて木暮の3Pシュート成功率なんだが…まだ練習のフリーの状態でもそう高くはない。

 

試合だと成功率は間違いなくもっと下がるだろう。だが外からシュートがあると思わせるだけでも試合展開は変わってくる。

 

春の県大会…試合に出れねぇのは残念だが、湘北がどこまで行けるのか楽しみだぜ。

 

 

 

 

side:木暮公延

 

 

春の県大会でいきなりベンチ入りをした。

 

三井や赤木ならともかく、俺が選ばれるとは思っても見なかった。

 

半ば呆然としていると一回戦目の試合が始まった。

 

前半早々に赤木は早速その存在感を見せつけた。

 

開幕で景気付けに両手でダンク(三井と美和さん曰くゴリラダンク)を決めると、攻守に渡ってゴール下を支配した。

 

赤木がゴール下を支配したおかげで湘北が優勢に進めていたけど、前半の半ばでタイムアウト取った相手チームが仕掛けてきた。

 

赤木にダブルチームをつけてきたんだ。

 

それでも赤木は止まらなかった。

 

チェックが厳しくなった赤木はベビーフックを使って得点を重ねていき、ファールで止められても2本に1本はフリースローを決めていく。

 

赤木は前半残り5分の時点で既に19得点、4リバウンド、4ブロックと大活躍だ。

 

そして前半も終わりに近付くと…。

 

「木暮君、後半から行きますよ。アップをしておいてください。」

 

唐突に安西先生にそう告げられた俺は慌ててアップを開始する。

 

うぅ…緊張するなぁ…。

 

試合に出たいとは思ってたけど、まさかこんなに早く出番が来るとは想像してなかった。

 

自分でもわかるぐらい緊張している。

 

「木暮、顔が真っ青だぜ。」

 

不意に三井が声を掛けてきた。

 

「わかるか?」

「あぁ。」

「そうか…。」

 

手を見ると震えていた。

 

こんな状態で試合に入れるのか?

 

そう不安に思っていると三井が肩を組んでくる。

 

「木暮、お前がやる事は3Pシュートを撃つことだ。それだけを考えてろ。」

 

3Pシュートを撃つだけ?

 

「三井、もし外したら…。」

「外しても構わねぇよ。赤木が取る。そうだろ、赤木?」

「あぁ、任せておけ。」

「…ははっ。」

 

やれやれ、緊張してる俺がバカみたいじゃないか。

 

まったく本当に…頼りになる仲間だよ。

 

それにしても前半が終わっていたのにも気が付かなかったのか。

 

でも今は落ち着いている…いや、まだ少し緊張しているけど、手が震えていたさっきよりはマシな状態だ。

 

これならなんとかやれると思う。

 

それから後半が始まって出場した俺はスペースを意識して走り回った。

 

すると…。

 

「赤木!外!」

 

三井の声掛けに気付いた赤木から俺にパスが来た。

 

「木暮!フリーだ撃て!」

 

三井の声で我に還った俺は3Pシュートを撃つ。

 

空中で放物線を描いたボールは、綺麗にバスケットを通過した。

 

「木暮!ナイスシュート!」

 

三井の声で3Pシュートが決まったと実感が沸くと、ゾクゾクっとした震えが全身に走った。

 

「赤木!もっと視野を広く!ゴール下で点を取る事だけがCの仕事じゃないぞ!」

「おう!」

「キャプテン!赤木1人にいい格好させるのはもったいないです!もっと点を取って目立っていきましょう!」

 

そんな三井の声掛けから驚く程にチームの動きが変わった。

 

コート上の湘北選手達が足を使って動き回り、赤木からパスを貰ってゴールを決めようとしだしたんだ。

 

赤木も無理に1人で勝負に行かずに、チームの皆にパスを出す様になった。

 

試合の最中に湘北に新しい攻撃のリズムが生まれたんだ。

 

それからは無我夢中で動き回った。

 

そして後半も残り10分を切ったところで俺はベンチに下がり、心地好い興奮が残る中で高校デビュー戦を終えた。

 

ベンチに座って汗を拭いている時に美和さんから聞かされたんだけど、俺は出場した10分だけで3Pシュートを3本も決めていたらしい。

 

どうりで相手チームからのマークがキツかったわけだよ。

 

チラリと横を見ると赤木もベンチで休んでいる。

 

大会スケジュールの関係で今日は2試合あるから、点差が開いたのもあって赤木を始めとしたスタメンは温存なんだろうな。

 

…今日の結果は正直に言ってたまたまだ。俺自身が良くわかってる。

 

だけどいつの日か、これが実力だと胸を張って言える様になりたい。

 

赤木…三井…俺、昨日よりもっとバスケが好きになったよ。

 

「試合…次はもっと出たいな。」

 

そうベンチで呟くと手にしていたタオルを強く握り締めたのだった。




今回の後書きは拙作内の高校バスケの大会の方式(?)についてのお話をば。

本話を書いていくにあたって少し大会の方式について調べたのですが…よくわかりませんでした。ノックアウト方式ってなんだよ…。

そういう訳で拙作内での大会の方式は作者の独断と偏見で決めてしまいます。

・インターハイ県予選は原作準拠。各ブロックを勝ち上がった4校で決勝リーグを行う。全国大会本戦はトーナメントで。
・ウインターカップは上同。
・春季関東大会は県予選、関東本戦共にトーナメントのみで。
・国体もトーナメント。
・天皇杯もトーナメント。

…といった形でいこうと思います。

ちゃんと調べろやとのご意見もあるかと思いますが許してクレメンス。


次の投稿は9:00の予定です。
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