side:三井寿
翔陽と海南の準決勝も後半に突入したが、試合は翔陽が優勢に進めていた。
「海南は厳しいな」
「あぁ、宮益がちょっとな」
赤木の言葉に俺はそう返す。
宮益は海南に3Pシュートという飛び道具を与えたが、その他のところで足を引っ張ってしまっている。だが、高頭監督に宮益を交代させる雰囲気は無い。
「公式戦の雰囲気を経験出来るのは公式戦だけですからね」
安西先生の言葉に皆が注目する。
「海南は日頃から海南大の選手達と練習を重ね技術、経験を高めています。ですが、一度負けたら終わりのトーナメントの雰囲気は、やはり試合でしか経験出来ません。高頭監督は宮益君にその経験を積ませるつもりなのでしょう。本番をインターハイかウインターカップと見据えて……」
日本の学生スポーツの多くはトーナメント形式だ。そしてトーナメント形式には、一度負けたら終わりというリーグ戦形式では味わえない独特の緊張感がある。
俺や牧みたいにその独特の緊張感を楽しめる奴もいるが、木暮の様に楽しみより先に緊張が来る奴もいる。宮益はおそらく木暮の様なタイプなんだろう。あいつの判断が微妙に遅れたりしてるのはその緊張のせいだな。
「この大会を宮益君の糧とする。その恩恵は海南にとってとても大きな物になるでしょう。もっとも、だからといって勝利を諦めているわけではありません。特に牧君は随分と発奮しているようですしね」
安西先生の言う通りに牧は随分と発奮している。俺と仙道の勝負に当てられたか?
牧から宮益にパスが通る。そして宮益が3Pシュートを決めた。
「それに宮益君も準決勝という舞台の緊張感に慣れてきた様です。そして残り10分で点差は13点……面白くなってきましたね」
安西先生の言葉通りに試合はどんどん面白くなっていく。まるでこの試合こそが決勝戦だとでも言う様に……。
◆
side:牧紳一
「ごめん、待たせた」
どこか浮わついていた宮の腰が据わったのがわかる。よし残り10分……これで勝負の場は整ったぜ。
「頼んだぜ、宮」
「おう!」
正直に言って翔陽とインサイドで勝負するのは分が悪い。高砂も海南大に進学した兼田さんにしごかれてはいるが、まだ海南のゴール下を一人で任せるのは少し不安だからな。
だが宮を戦力として計算出来る様になった今、巻き返しを計る事が出来る。
もっとも、それは藤真も感じ取ってはいるだろうがな。
「さぁ行くぜ翔陽。勝負はここからだ」
俺は決勝に行く。決勝で三井が待っているんだからな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。