side:三井寿
海南と翔陽の準決勝は翔陽が勝った。だが試合は本当に接戦だった。
試合残り10分から宮益が調子を上げたのを見てとった藤真は、ターンオーバーぎりぎりの時間一杯を使う組み立てに切りかえた。
対する牧は追い付くために速攻気味に組み立てていったが、最終的にはワンゴール差で翔陽が逃げ切った形だ。
熱い試合展開に飲まれず冷静に試合を組み立てた藤真の姿には少し凄みを感じたぜ。
さて、決勝は俺達湘北と翔陽になったわけだが、スタメンのPGには安田が選ばれた。
勝負所での長瀬さんとの交代で緩急をつける狙いもあるんだろうが、それ以上に安田のゲームメイクに藤真がどう対応するのかを安西先生は見ておきたいんだろう。
……さて、この大会は全国に繋がらねぇが、そろそろ大会で優勝をしておきたいところだ。
目標の全国制覇……それを成すための通過点としてな。
◆
side:藤真健司
「一志、お前がスタメンだ」
同学年の長谷川一志(はせがわ かずし)にそう告げると、翔陽のメンバーからざわめきが起こる。
「藤真、一志をどう使うつもりだ?」
「三井にぶつける」
一志同様に同学年の花形透の疑問にそう答えると皆が驚く。
「いや、確かに一志は中学時代に三井と対戦経験があるって言っていたが、今の三井を一人で相手にするのは……正直に言って荷が重くないか?」
「一志には悪いが確認したいんだ。今の三井をな」
俺の言葉に皆が耳を傾ける。
「去年の三井の弱点はスタミナだった。その弱点が今はどうなっているのか。他に何か攻め口がないのか……そういった色々を近くで観察したいんだ」
一志と目を合わせると俺は頭を下げる。
「すまない一志。お前を捨て石にする。この先、インターハイやウインターカップで湘北に勝つために」
「……大丈夫だ。やらせてくれ」
大人しい性格の一志の力強い言葉に驚いた俺は顔を上げる。
「中学の時は圧倒された。なにも出来なかった。……正直に言って、三井に憧れた。」
皆が一志の言葉を静かに聞いている。
三井に憧れる。その気持ちはわからなくない。むしろ神奈川のバスケに関わる人達は少なからず三井の名を聞き、そのプレーを一目見たら憧れるだろう。……俺もあいつの3Pシュートには憧れたからな。
「でも、俺も翔陽に入って1年……本気で頑張ってきた。藤真、捨て石で構わない。試合に出してくれ」
そう言って一志が頭を下げる。
……そうだよな。どんな形でも試合に出たいよな。それも憧れの相手とやれるなら尚更だ。
「わかった。三井は頼んだぞ、一志」
「……あぁ!」
監督は難しい。今でも正解のせの字もわからない。でもこうして誰かの成長した姿を見れるのは……好きになってきたかな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。