side:三井寿
前半は翔陽に7点リードされて終わった。うん、悪くない状況だ。
安田は藤真相手によくやっている。止めることは出来てないがしっかりディレイを掛けられているし、無理に止めにいってファールを貰っていない。
身内贔屓な評価かもしれねぇが、まだ1年である事を考えりゃ100点満点の出来だ。
「皆さん、前半は良い出来でした。この調子で行きましょう」
どうやら安西先生も安田に対して俺と同じ評価みたいだな。
「では後半の作戦を伝えます」
……なるほど、面白い。
「君達は強い。ここで優勝をして、インターハイへの弾みにしましょう」
「「「はい!」」」
◆
side:藤真健司
前半、予想したよりも点差は広がらなかったな。あの1年が想像以上に精神的にタフだったのが原因だ。
何度もファールを誘ったがのってこなかった。後半はそれを加味して組み立てないと。
それはそれとして……と。
「皆、俺の予想では湘北は後半、インサイドを中心にくる」
「外じゃないのか?リードされてるんだぞ?」
花形の言葉を俺は首を振って否定する。
「インターハイ予選ならそうくる可能性が高いだろうが、今回は違う。安西先生は神奈川で屈指の高さを持つうちを相手にして、湘北のインサイドの強化を計ってくる。優勝を狙いつつな」
「……舐められてるわけじゃないよな?」
「勿論さ。しかも保険に三井もインサイドに絡ませてくると思う。強かで嫌になるぜ」
そう言って肩を竦めるが笑いは起こらない。それだけ三井の存在を脅威に感じているってことだ。
「俺の予想通りなら後半、インサイドは前半以上にタフなものになる。皆、頼んだぜ」
「あぁ、任せろ」
◆
side:三井寿
後半、俺達はインサイドを中心に攻めていったんだが、翔陽からは動揺を感じ取れなかった。おそらく予想していたってことだろう。
藤真の奴、牧とは別ベクトルで厄介な存在になってきたな。まぁ、強敵は望むところだぜ。
「赤木さん!」
安田から赤木にパスが通る。俺は赤木が仕掛けるタイミングでインサイドに切り込む。
(お前もいい加減、見えてきた頃だろ?)
ベビーフックの途中で赤木は、手首の動きだけで俺へとパスを出す。
「ナイス!」
パスを受け取った俺は落ち着いてレイアップを決めた。
このワンプレーで流れを掴んだのか、俺達はジワジワと点差を詰めていった。
時折藤真が3Pシュートを決めて突き放そうとしてくるが、お返しとばかりに木暮が3Pシュートを決め返す。
随分と頼もしくなったもんだぜ、木暮。
そうして残り1分で3点リードとなった俺達に、藤真がアタックを仕掛けようとしたその時……。
『ピッ!』
安田がファールをして藤真を止めた。藤真の顔には動揺が見える。おそらく3Pシュートを狙ってたんだろう。
だが安田がファールで止めた。これまで丁寧に、慎重にファールをしないようにディフェンスをしていた安田がだ。
しかもこの終盤、翔陽には藤真を動揺から立て直すためのタイムアウトが残ってない。
もし狙ってやったんならとんでもないクソ度胸だが……あぁ、あの顔は狙ってやりやがったな。優しい顔してとんだクセ者だぜ。
その後、動揺した藤真が3Pシュートを外すと、返しの攻めで赤木が豪快にダンクを決めて5点差となる。
これで翔陽が万策尽き果てると、俺達は春の県大会を制したのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。