side:三井寿
春の県大会で優勝した俺達湘北は、表彰式の後でそれはもう浮かれてはしゃいだ。
あの赤木もいつもより口数多く喋っていたのを見れば相当嬉しかったんだろう。
だが……。
『皆さん、優勝おめでとうございます。ですがここがゴールではありませんよ。我々はまだ全国の猛者達と戦うスタートラインにすら立っていません。勝負はこれからです』
という安西先生の御言葉で全員が我に返った。流石は安西先生だ。締めるところはピシッと締めてくれるぜ。
さて、大会翌日は練習が休みになったんだが、俺と美和は一緒にスポーツ用品店に足を運んでいた。
理由は俺の背が伸びてバッシュのサイズが合わなくなってきていたからだ。
「悪いな美和、色気の無いデートでよ」
「いやいや、私達らしくていいじゃない。むしろ大歓迎!」
そう言って満面の笑みを見せてくれる美和は本当にいい彼女だぜ。
二人でバッシュを選んだその後の帰り道……。
「ごめんなさい、桜木君。私、好きな人がいるの」
「ズコーン!?」
背が高く赤いリーゼントの奴がフラれている現場に遭遇した。
「おめでとう花道!これで通算22回目の失敗だぜ!」
そう言って沸き立てるあいつの連れらしき連中を、あいつは頭突き一発で黙らしていった。
「いやー、なんとも愉快な連中だねぇ」
「外から見ている分にはな」
それにしてもあの赤いリーゼント……どっかで見た覚えがあんだよな……。
「あん?なに見てんだコラァ!?」
赤いリーゼントが威嚇してくるが、俺はそいつのガタイの良さに注目していた。
そして……。
「よぉ、ちょっとバスケやってみねぇか?」
「あん?バスケェ?」
気が付けば赤いリーゼントをストリートにあるコートに誘っていた。
◆
side:赤木美和
「悪いな美和、デート中だったのによ」
「大丈夫大丈夫!それよりも今日は疲労を抜くためのオフなんだから、明日に響くほど動いちゃダメだよ?」
「あぁ、わかってる」
先客のバスケ少年からバスケットボールを借りた寿君は赤髪の男……桜木花道に声を掛ける。
「なぁ桜木、あのリングに届くか?」
「あん?どういうことだよミッチー」
「こういうことさ!」
そう言うと寿君はダンクを決める。
「「「おぉー!」」」
先客のバスケ少年達に加え、桜木の連れ達からも拍手が上がる。
「どうだ?出来るか?」
「ハッハッハッ!そんなの楽勝だ!」
そう言うと桜木はバスケットボールを鷲掴みにして走り出す。
そして……。
「ンガッ!?」
目測を誤ったのかリングを素通りし、信じられないことにバックボードにオデコをぶつけていた。
そんな桜木を桜木の連れ達やバスケット少年達は笑っていたが、私と寿君は驚きで声が出ない。
……バスケのバの字も知らないド素人だけど、とんでもない原石だわ。
「なぁ、桜木」
「……なんだよ、ミッチー」
「お前、本気でバスケやってみねぇか?」
「はぁ?」
これが私達と桜木の初めての出会い。
そして桜木にとって初めてのバスケとの出会いだった。
これで本日の投稿は終わりです。
というわけでテコ入れですね。このままだとマジで活躍の場が無くなりそうだったので……。
また来週お会いしましょう。