side:三井寿
「違ーう!」
「ふぬっ!?」
桜木の奴が湘北バスケ部の練習に顔を出す様になって3日が経ったが、今のあいつは赤木にしごかれている。
「桜木君はいいリバウンダーに成れる素質がありますね」
「はい」
安西先生の言葉に俺は頷く。
バックボードに頭をぶつける程のジャンプ力に赤木程じゃないがパワーもある。それに無尽蔵とも思えるスタミナまで持ってやがる。これで特にスポーツをやったことのない素人だっていうんだから才能ってのは残酷なもんだぜ。
けど身体能力だけじゃどうにもならねぇところがあるのがスポーツの面白いところだ。
まだ本格的にバスケを始めて3日の桜木だが、少しずつ汗を流す楽しさをわかってきたみてぇだな。
あいつが湘北に入る頃が楽しみだぜ。
「いいか桜木、ゴール下は戦場だ。身体を張ってボールを取るんだ。」
「くそっ、ゴリのくせに」
「だーれがゴリだバカたれが!」
赤木と桜木のそんなやり取りに木暮が顔を出す。
「まぁまぁ赤木、桜木は素人とは思えない程にいい動きをしてるじゃないか」
「おぉ!わかってるじゃないかメガネ君!ハーッハッハッハッ!」
「木暮、こいつをあまり甘やかすな。直ぐにつけあがる」
飴の木暮と鞭の赤木。このコンビの後輩指導は湘北の名物になりつつあると思う。俺も負けてられねぇな。
「さて、それでは失礼しますよ」
そう言って安西先生は桜木の所に向かった。
桜木はバスケの素人だ。けどそれを補える程の運動能力を持っている。
だからこそ今の時期に徹底して基礎を覚えさせる必要があるのはわかるんだが……安西先生に優先的に指導してもらえるのは素直に羨ましいぜ。
◆
side:安西光義
少し前に三井君が面白い子を連れて来ました。
その子は今私が指導している桜木花道君です。
「フンヌッ!」
「桜木君、力が入り過ぎです。もっとリラックスですよ。リラックス」
「リラックス、リラックス」
桜木君はバスケに関しては素人ですが、運動能力は素晴らしいものを持っています。特に瞬発力に関しては日本人離れしていると言っていいでしょう。
ですが、だからこそ力で何とかしてしまおうとする癖があります。おそらく身体を動かす事に関して、これまではそれで何とかしてこれてしまったのでしょう。
緊張と脱力、このバランスこそがスポーツには大事なものです。それを教えるには素人の状態こそが望ましい。
なまじ経験を……成功体験を得てしまっていると、修正するのは非常に困難になりますからね。
長瀬君を始め教え子の皆には申し訳ありませんが、インターハイ予選前の追い込みに入るまでは桜木君を優先させていただきましょう。
「とはいうものの、あまり心配していませんがね」
そう呟き目を向ける先には、三井君が中心となって切磋琢磨する光景がある。
ふふ、若者達の青春を楽しむ光景は美しいものですね。
「おいオヤジ、全然入んねぇぞ!」
さて、それでは桜木君の指導をしましょうか。
指導らしい指導は皆が優秀なので久し振りですね。楽しませていただきましょう。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。