side:仙道彰
インターハイ予選まで残り1ヵ月程となった頃、湘北との練習試合が組まれた。
なんでも去年も同じ様な時期に湘北と練習試合をやったらしい。伝統ってやつかね?
まぁ、そんなことはどうでもいいか。三井さんと試合をやれるなら文句は無い。
そう思って練習試合の日、寝坊せずに湘北が来るのを待ってたんだが、湘北にやたら元気な赤頭の奴がいた。
「陵南は俺がたおーす!」
開口一番にそう言った赤頭は赤木さんに拳骨を落とされていた。
そんなわけであの赤頭が妙に印象に残ったが、それはそれとして練習試合に集中だ。
ジャンプボール……魚住さんが制して俺達の攻撃で試合が始まる。
ボールが俺に回ってくると三井さんが俺のマークについた。それだけでにやけちまうな。
さて、どうすっかな?
この練習試合、俺はFじゃなくPGとして出ている。
田岡監督から海南の牧さんみたいにガンガン仕掛けてゴールを狙っていいってお墨付きをもらっちゃいるが、三井さんがマークについた以上それは難しい。
となると福田や魚住さんを中心に組み立てて、三井さんの頭にパスのイメージを刷り込んでみるか。
そういう思惑でパスを回して試合を進めていくが、ジリジリと点差が広がっていく。
そして前半の半分が過ぎた頃、三井さんと湘北のキャプテンの長瀬さんが下がって、木暮さんと見慣れない1人が入ってきた。1人は背の低さを見るに多分同じ1年か?
その見慣れない奴が俺のマークにつく。
「1年か?」
「あぁ、お前と同じ1年の宮城だ」
「そうか」
ボールを持った俺はとりあえず仕掛けてみる。
抜いたと思ったがついてくる……いや、追いついてきたか。
(速さは牧さん以上かもな……)
切り返し中に行こうとすると宮城が辛うじてといった感じでついてくる。
「やるな」
「毎日の様に三井さんにしごかれてるからな」
「そいつは羨ましい」
そう言うと宮城は『うげっ』とでも言いたそうな顔をした。
変な奴だな。三井さんみたいな上手い人と毎日やれるなんて、楽しい以外に無いだろ?
◆
side:田岡茂一
三井が抜けた事で点差はジワジワと追い上げているが、流れを完全につかめないのは木暮の存在が大きい。
三井という絶対的なエース兼ナンバーワンシューターの影に隠れがちだが、彼も彼でシューターとしての能力は翔陽の藤真に肩を並べられる程に高い。
去年の今頃は平凡なSGという印象だったんだがなぁ……。
ため息を吐いた俺は仙道とマッチアップする宮城に目を向ける。
(去年に見た時よりも確実に成長している……もっとも、うちの仙道の方が成長しているがな)
彼がうちに来てくれていれば、仙道と福田のオフェンスが更に活きたのだろうが、無い物ねだりをしても仕方がない。
仙道のパサーとしての素質が開花しつつあるし植草も順調に成長してくれている。我が陵南にも役者が揃いつつあるのだ。
それにしても……。
「おいオヤジィ!早く俺を出せ!リョーちんのピンチだ!」
「花道うるさーい!あんたの出番は夏の合宿からって言ってるでしょうが!」
「ぐぬっ……ですが姐さん……」
「ですがじゃない!見ることも練習なんだからしっかり見なさい!」
随分と騒がしい奴が湘北にいるものだ。
安西先生が言うには彼はまだ中学生らしいが……安西先生が目を掛けるだけの素質があるということだろう。桜木……要チェックといったところか。
「さて、点差は追い付いたが……このまま行かせてはくれんだろうなぁ」
その予想通りに再び三井が投入されると、あっという間に点差を広げられてしまう。
やれやれ、試合に負けているというのに仙道のあの楽しそうな顔はどうにかならんものか。宮城とマッチアップしていた時と明らかに違う。
そんなムラッ気があるうちは、三井や牧と同じステージに立つのは難しいぞ?不可能とは言わんがな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。