三井寿は諦めの悪い男   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第9話『名前呼びは意外と難しい』

湘北は無事に2回戦に勝ち進んだ。

 

今日は後1試合あるから、俺と美和で次の対戦相手の偵察をする。

 

2回戦の相手は陵南か角野のどちらかだ。

 

「陵南に随分とデカイのがいるな。」

「私達と同じ1年の魚住君だね。」

「魚住か…。」

「他にも池上君っていう1年がいるみたい。」

 

魚住の奴はおそらく赤木よりも身長がある。

 

どんなプレイをするんだ?

 

陵南と角野の試合が始まった。

 

試合前半は陵南が優勢に進めてるが…。

 

「ハッキリ言って魚住はデカイだけだな。」

「そうだね。剛憲なら十分に抑えられるよ。」

 

もう1人の1年の池上はベンチだ。

 

この時期の1年でベンチ入りしたってことは、あの池上って奴にも何か優れたもんがあるんだろうが…。

 

他の2年や3年の動きも見ていく。

 

…チーム全体じゃ陵南の方が上だな。救いは陵南に3Pシューターや飛び抜けたスコアラーがいない事か。

 

まだ前半の途中までしか見てないが、陵南との試合は木暮がキーマンになりそうだ。

 

もしかして安西先生はこれを見越して木暮を1回戦で使ったのか?

 

「彼女連れで見学とはいい御身分だな、三井。」

 

不意に声を掛けられて振り向くと、見覚えのある色黒の男の姿があった。

 

「えっ?やっぱり彼女に見えちゃう?いや~嬉しいなぁ。」

「お前は確か去年の県大会決勝でマッチアップした…。」

「牧だ。海南の牧紳一(まき しんいち)。」

「そうか、よろしくな。」

 

美和が何か言ってたが気にせず牧と握手をすると、ジャージの隙間から海南のユニフォームが見えた。

 

「もう海南のユニフォームを着てるのか。やるな。」

「ふっ、お前もうちに来ていたらこいつを着てただろう?」

「かもしれねぇな。」

 

そう会話をすると牧が美和に目を向ける。

 

「あっ、私は赤木美和。湘北にはもう1人赤木がいるから美和って呼んでね。」

「おう、よろしくな、美和。」

 

美和との挨拶を終えた牧が俺に目を向けてくる。

 

「ところで三井、お前、なんでさっきの試合に出てなかった?ユニフォームを着てる様子もないが…。」

「入部初日に膝をやっちまってな。今はリハビリ中なんだ。」

「…それは運が悪かったな。」

「まぁな、だが夏には十分間に合う予定だ。」

「そうか…。」

 

牧の言う通りに運が悪かったとポジティブにいくのが正解なんだろう。

 

そう考えると牧の奴はメンタルが強い…いや、強くなったのか?

 

これは海南とやる時は手強そうだな。

 

「三井、次にやる時は俺が勝つ。だから必ず戻ってこいよ。」

「言われなくても必ず戻ってみせるぜ。けど、次も俺が勝つけどな。」

 

不敵に笑った俺達は拳を合わせる。

 

「それじゃ、そろそろ行くぜ。邪魔して悪かったな、お二人さん。」

 

そう言って牧は手を振りながら去っていく。

 

その後も俺は美和と一緒に陵南を偵察して、次の試合に備えていったのだった。

 

 

 

 

side:赤木美和

 

 

(彼女に見えちゃうかぁ…そっかぁ…にしし!)

 

陵南と角野の試合の前半が終わると、私はさっきのやり取りを思い出して思わずにやけてしまう。

 

(海南の牧君が私の事を三井君の彼女だって!しかも三井君は否定してない!これはもう私が三井君の恋人になったも同然でしょ!)

 

勝ちを確信した私が拳を握りしめると、他の高校の女子生徒達がチラチラこっちを見てるのに気付く。

 

ふふふ、私を応援してくれてるのね。

 

(応援ありがとう!)

 

ビシッと彼女達にサムズアップをしたら、彼女達からは天に向かって伸びる中指が返されたわ。

 

(ふっ、これが勝者へのやっかみってやつね。)

 

けど!それはつまり!彼女達からも私と三井君が恋人に見えている証!

 

いける!いけるわ!この流れで三井君を名前で呼べるはず!

 

行くのよ美和!今こそチャンス!

 

「ひ、ひ、ひさ…三井君。」

「うん?どうした美和?」

「う、ううん、なんでもない。」

 

自分でもわかるぐらい顔が熱くなった私は、バクバクとうるさい心臓を押さえながら三井君から顔を逸らして俯く。

 

(たっか!?名前呼びのハードルたっか!?なにこれ!?名前呼びってこんなに難しいの!?)

 

俯いていた私がふと視線を上げると、私のヘタレ具合を見た彼女達がニヤニヤと笑うのが目に入る。

 

(仕方ないじゃん!去年までバスケ一筋で来た恋愛初心者なんだから仕方ないじゃん!)

 

がるると彼女達を威嚇していると…。

 

「美和、どうした?本当に大丈夫か?」

 

不意に三井君に声を掛けられてしまってビクッてしてしまう。

 

「う、うん!大丈夫だよ!もう5月なのに、ちょ~っと肌寒いなぁなんて思っちゃったりしただけだから!」

「そうか?じゃあこれを着ろよ。」

 

そう言いながら三井君はジャージの上を脱いで渡してきた。

 

「…へっ?」

「寒いんだろ?まぁ、今日は汗をかいてないから大丈夫だと思うが…」

「だ、大丈夫大丈夫!全然気にしないよ!バッチコーイ!」

 

私の言葉にキョトンとした三井君が不意にプッと吹き出す。

 

「はは、調子が戻ってきたな。その調子で後半の偵察も頼むぜ。」

「うんうん、ドーンと任せて!今の私は無敵だから!」

 

三井君のジャージを羽織ると思わず顔がにやけちゃう。

 

(も~三井君カッコ良過ぎ!どれだけ私を惚れさせたら気が済むのよ!)

 

チラッと彼女達に目を向けると舌打ちをしているのが見える。

 

(あらごめん遊ばせ、おほほほ!)

 

内心で彼女達に勝ち誇ると、三井君のジャージに手を触れてから大きく息を吐き出す。

 

(よしっ、私復活!次のチャンスが来たら今度こそ三井君を名前呼びしてみせるんだから!)

 

決意を新たに誓うと彼女達に目を向ける。

 

(応援よろしく!)

 

そう意思を込めて彼女達にサムズアップをすると、彼女達からはまた天に伸びた中指が返ってきたのだった。




前回の後書きで大会の方式の事を書いたので今回は試合のルールをば。

ルールと言ってもファールの名称の事です。

原作の時代ではハッキングと呼ばれていたファールですが、現在では手を使ったファールは全てイリーガルユースオブハンズと呼ばれて統一されているそうです。ですが拙作では原作をリスペクトし、旧い名称のハッキングやプッシング等で表記していこうと思います。

これはただの作者のワガママですがどうかご容赦をば。


次の投稿は11:00の予定です。
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