side:三井寿
決勝リーグの1回戦のもう1試合……海南と翔陽の試合は激戦になった。
海南は春の県大会の時にはまだどこかぎこちなかった宮益を加えた新戦術を、完全に海南の戦術としていたのには驚いたな。
強豪には強豪と呼ばれるに足る特色めいたモノがある。攻撃特化だったり防御特化だったり様々だが、長年続けてチームカラーとも言えるものがあるからこそチーム作りに迷うことがなく、強豪は強豪と呼ばれるだけの強さにまで成長出来るんじゃないかと思う。
そんな強豪校の一つである海南が新戦術に手を出す。兼田さんという絶対的なチームの支柱が抜けたからというのもあるかもしれないが、それでもOBを始めとした外野からの声など少なくないリスクがあった筈だ。
それでも改革とも言える新戦術を取り入れる。高頭監督の向上心に指導力、そしてそれに応える牧のセンスと勝利への渇望心とも言えるものには素直に感心するぜ。
対する翔陽も一筋縄じゃいかない強豪故の強かさがある。
藤真は海南の新戦術の要である宮益を封じるために、春の県大会で俺に張り付いた奴をマンマークに付けた。
更にインサイドを190cmオーバーの3人で固めてオフェンス、ディフェンス両方のリバウンドを拾いまくる。これで試合のイニシアチブを翔陽が握った。このチームの柔軟性の高さはもう翔陽の特色と言えるかもしれないな。
今の高砂じゃ複数の相手を捌ききるのは難しい。さて、牧はどうする?
そんな俺の疑問を吹き飛ばす様に海南は……牧はそんなことじゃ止まらなかった。リバウンドが拾われるならそれ以上に攻めればいいとばかりに、より一層アグレッシブに攻め続けた。
前半後半と両チームのスコアはシーソーゲームを続けてラスト20秒で海南が2点リードの状況となる。
翔陽は逆転のために藤真が3Pシュートを決めるか、誰かが3点プレーを決めるしかない。
果たして藤真の選択は……藤真は3Pシュートを選んだ。この試合中一度も撃たなかったディープスリーを撃ったんだ。
そのせいか牧の反応が遅れて藤真はほぼフリーの状態で撃つことが出来、残り4秒でディープスリーは見事に決まった。
残り4秒で海南に出来ることはほとんどなく、入れと祈ってハーフライン付近からボールをゴールに投げるしかなかった。
だがその祈りは届くことなく翔陽が勝利した。
万が一ディープスリーが外れてもリバウンドを拾って押し込む。そんな引き分けで終わるための保険を掛けた藤真のゲームメイク……敵ながら見事としか言いようがないな。
歓喜のコートの中でチームメイトに揉みくちゃにされている藤真を見ながら思ったのは、藤真の強かさが誰に影響されたものなのかという事だ。
俺はチラリと安田を見る。……多少驚いてるものの、ノンキに称賛の拍手を送ってやがる。
なんというか色々と言いたいことはあるが……益々面白くなってきやがったな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。